非小細胞肺がん治療剤「ラズクルーズ錠」発売 「ライブリバント」との併用療法で投与 J&J

 Johnson & Johnson(J&J)は21日、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん治療薬「ラズクルーズ錠」(経口EGFRチロシンキナーゼ阻害薬、EGFR TKI)を発売したと発表した。
 同剤は、EGFR及びMETを標的とする完全ヒト型二重特異性抗体「ライブリバント」(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人には240mgを1日1回経口投与し、患者の状態により適宜減量して用いる。薬価は、ラズクルーズ錠80mg:4403.30円、同240mg:1万2354.70円。
 ライブリバントとラズクルーズの併用療法は、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer: NSCLC)の一次治療として、オシメルチニブに対し、無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)において優越性を示した最初で唯一の化学療法を用いない多標的治療法である。
 ライブリバントは、EGFR及びMETを標的とし、免疫細胞を介した作用も有する、肺がん領域において承認された唯一の完全ヒト型二重特異性抗体で、ラズクルーズはEGFR TKIである。
 肺がんは、世界的に最もよく知られているがんの1つで、死亡率も最も高いがんの1つだ。全ての肺がんのうち、NSCLCは80~85%を占める。さらにNSCLCにおける最も一般的なドライバー遺伝子変異は、細胞の増殖や分裂をコントロールする受容体型チロシンキナーゼであるEGFR遺伝子の変異である。
 日本においては、肺腺がん患者の約35%がEGFR遺伝子変異を有すると推計されている。現在の標準治療であるTKI単剤療法を受けたEGFR遺伝子変異を有する進行性NSCLC患者さんの5年生存率は20%未満だ。
 また、国内では、EGFR遺伝子変異を有するNSCLC患者のおおよそ3分の1が、病勢進行や限られた治療選択肢のために、二次治療に進めないという報告もある。さらに、TKI単剤療法を受けた後の獲得耐性により、二次治療がより困難となる場合がある。従って、EGFR遺伝子変異陽性のNSCLCの一次治療においては、これらのアンメットニーズに対処できる治療法が求められていた。
 国際共同P3試験(MARIPOSA試験)結果に基づき承認されたライブリバントとラズクルーズの併用療法は、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者の一次治療において、オシメルチニブと比較し、30%の病勢進行または死亡リスクの減少(PFS中央値: 16.6カ月対23.7カ月)を示した。
 なおライブリバントとラズクルーズの併用療法の安全性プロファイルは、それぞれのプロファイルと概ね一貫していた。有害事象の発生率は、他のライブリバントレジメンと一貫するものであった。この併用療法では静脈血栓塞栓症が認められたが、その後、ライブリバントとラズクルーズの併用療法の開始後4ヵ月間にわたって経口抗凝固薬を予防的に投与することで、静脈血栓塞栓症のリスクが低下する可能性が示唆された。
 今年パリで開催された2025年欧州肺癌学会において発表されたP3相MARIPOSA試験は、オシメルチニブと比較し、ライブリバントとラズクルーズの併用療法が統計学的に有意かつ臨床的に意義のある全生存期間(overall survival :OS)の改善を示した最初で唯一の試験である。
 解析結果では、追跡期間中央値37.8ヵ月の時点で、化学療法を用いないライブリバントとラズクルーズの併用療法群は、オシメルチニブ群と比較して、一次治療におけるOSを有意に延長したことが示された(ハザード比:0.75、95%信頼区間:0.61~0.92、P<0.005)。
 ライブリバントとラズクルーズの併用療法のOS中央値は未到達であることから、生存期間延長効果は、観察された追跡期間を超えて持続していることが示唆されている(未達成[NR]、95%信頼区間:42.9~NR)。
 一方、オシメルチニブ群のOS中央値は36.7ヵ月(95% 信頼区間:33.4~41.0)であり、オシメルチニブを用いた過去の試験と一貫していた。3年半の時点での生存率は、ライブリバントとラズクルーズの併用療法群が56%であるのに対し、オシメルチニブ群では44%であった。これらのデータからは、ライブリバントとラズクルーズの併用療法により、OS中央値が、オシメルチニブと比較して少なくとも12ヵ月延長する可能性が示唆されている。

◆林秀敏近畿大学医学部内科学教室腫瘍内科部門教授のコメント
 ライブリバントとラズクルーズの併用療法が、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの一次治療として加わったことで、長年のアンメットニーズであった生存期間の延長に寄与し、多くの患者さんに希望をもたらしてくれるものと期待している。この治療法が、肺がん治療の新たな可能性を切り拓き、さらに進化させてくれることを願っている。

◆關口修平J&J Innovative Medicine Japan代表取締役社長のコメント
 ライブリバントとラズクルーズの併用療法は、患者さんに大きなベネフィットをもたらし、非小細胞肺がんの治療を変革させるだろう。さらに、非小細胞肺がん治療を新たなステージに押しあげ、肺がん患者さんとご家族に希望と意義ある時間を提供できるものと確信している。
   

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