MSDは19日、抗PD-1抗体「キイトルーダ」について、悪性胸膜中皮腫および治癒切除不能進行・再発胃がんの一次療法での国内適応追加承認を取得したと発表した。
適応追加の適応症は、切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫。加えて、HER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんに関する国際共同P3試験(KEYNOTE-811試験)の臨床成績に基づく添付文書改訂が行われ、 HER2陽性・陰性にかかわらず胃がんの一次療法での使用が可能になった。
悪性中皮腫は胸部、腹部、心臓、精巣など、体の特定の部位を覆う膜に発生するがんである。肺あるいは胸腔を覆う膜に発生する悪性胸膜中皮腫は、悪性中皮腫の中で最も多く、80~90%弱を占めるとされている。
悪性中皮腫発生の主な原因としては、アスベスト(石綿)の曝露が知られている。日本では、1950年代から70年代にかけての高度経済成長期にアスベストが大量に使用された。アスベスト曝露開始から発症までの潜伏期間が25~50年とされており、日本における悪性中皮腫の発生ピークは2030年頃で、罹患者数は年間3000人に及ぶと予測されている。
また、日本における悪性胸膜中皮腫を含む悪性中皮腫の年間死亡者数は増加傾向にあり、1995年には500人(男性356人、女性144人)であったが、2023年には1595人(男性1,312人、女性283人)となっている。
ほとんどの悪性胸膜中皮腫患者の予後は不良で、切除可能な段階で診断されるのは10~15%程度である。悪性胸膜中皮腫の治療における医療ニーズは依然として高く、今回の適応追加の承認により、新たな治療選択肢を提供することが可能となった。
今回の適応追加承認申請は、海外の多施設共同非盲検無作為化P2/3試験(KEYNOTE-483試験)および国内の単群多施設共同非盲検非無作為化P1b試験(KEYNOTE-A17試験)のデータに基づいている。
一方、胃がんは、日本で3番目に多いがんで、がんの死因で第4位となっている。2020年には約11万人が新たに胃がんと診断され、2023年には約3.9万人が亡くなっている。
胃がんは初期症状がほとんどなく、長年にわたりゆっくり進行することが多いため、進行してから発見されることも少なくない。IV期の胃がんと診断された患者さんの5年生存率は6.7%で、新たな治療法の開発が喫緊に求められていた。
今回、化学療法歴のないHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃又は食道胃接合部腺癌患者におけるキイトルーダ、トラスツズマブおよび化学療法(カペシタビンおよびオキサリプラチンの併用、または5-FUおよびシスプラチンの併用)の併用療法の有効性および安全性を評価した国際共同P3試験(KEYNOTE-811試験)の結果が、添付文書に追加された。キイトルーダは2024年に治癒切除不能な進行・再発の胃癌の効能・効果で適応を取得しており、添付文書の「効能又は効果に関連する注意」においてHER2陰性患者への投与が規定されていたが、今回「効能又は効果に関連する注意」も改訂され、HER2陰性の患者だけでなく、PD-L1陽性が確認されたHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌患者の一次療法としても投与可能となった。