大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻とNTTプレジョンメディシンは、高血圧保健指導プログラムの個別最適化に関する共同研究を開始した。
同共同研究は、NTTコホートにおける健康診断データ、遺伝子データなどのビッグデータを活用し、生活習慣病である高血圧対策に資する保健指導プログラムの確立を目的としたもの。
個々人にあった最適な保健指導プログラムの実現により、高血圧対策としての保健指導の効果向上ならびに将来における医療費の適正化、さらに早期の生活指導による行動変容を促し、高血圧の予防対策への寄与を目指す。
NTTコホートとは、約10万人(2025年3月時点)を超える、平均10年以上の経年の健康診断・問診データと突合された遺伝子データを有する就業世代の大規模企業コホートである。
登録者との双方向のコミュニケーションが可能で、登録者を対象とした新たなデータ取得の実施や、NTTコホートが保有する各データと掛け合わせた複合分析を可能とする。
高血圧は、循環器疾患の最も頻度の高い危険因子となる疾患である。現在、国内で約4300万人の高血圧患者が存在するとされ、高血圧になる前の早い段階からの生活習慣改善が望まれているとともに、就業世代からの早めの対策が非常に重要と言われている。
だが、現状では十分な予防対策が行われているとは言えず、また、保健指導などの非薬物的治療法については予防効果の高い方法は確立されていない。高血圧はその原因から合併症の発生、生活習慣改善への反応性から薬剤に対する効果に至るまで遺伝子素因が関与すると考察され、さまざまな形で遺伝子情報を用いた高血圧に対するオーダーメイド診療の可能性が考えられる。
同研究では、遺伝子情報による保健指導の効果の違いを検証することを目的とし、遺伝子情報を考慮したその人個人に合った高血圧オーダーメイド保健指導方法の確立を目指す。
具体的には、研究対象者に対し、同研究用にプログラム化した保健指導を3ケ月間行う。保健指導の前後の、家庭血圧値、推定塩分摂取量、Na/K比(ナトカリ比)など検査値の変化を評価し、遺伝子情報と合わせて保健指導の効果を検証する。同研究開発における各機関の役割は、次の通り。
◆大阪大学
・保健指導プログラムの検証、保健指導の実施、データ分析
※共同研究者(研究代表者):大学院医学系研究科 保健学専攻 総合ヘルスプロモーション科学講座 神出計教授
◆NTTプレシジョンメディシン
・保健指導プログラムの検証、保健指導の実施、データ収集・分析支援、研究対象者支援
大阪大学では同研究をもとに、個人の遺伝子情報に基づいた保健指導の有効性を検証し、有効性が確認されれば広く高血圧のみならず、さらに糖尿病や脂質異常症など生活習慣病全般への応用をめざし、特に勤労世代の疾病予防対策方法の確立に貢献していく。
また、NTTプレシジョンメディシンでは、特定保健指導事業者として、保健指導メニューを提供している。同研究で確立した保健指導方法の実装化により、高血圧を含む生活習慣病対策のための効果的な保健指導・生活指導も新たにメニューに加えて提供することをめざし、予防・改善、さらには医療費の適正化の実現に貢献していく。
現在、同社の保健指導メニューでは、「血糖値の見える化」を活用した特定保健指導を提供している。2024年度から開始された第4期特定健診・特定保健指導において、特定保健指導の参加率・実施率の向上、主要達成目標である腹囲2㎝・体重2㎏減を達成するために、効果的な保健指導を提供している。
