塩野義製薬は14日、長時間作用型HIV予防薬「Apretude」について、販売後臨床試験データにおいて新規感染が0件であることが確認されたと発表した。
塩野義製薬とGSK、ファイザーの合弁会社であるヴィーブ社がApretude(長時間作用型のHIV予防薬)とCabenuva(長時間作用型のHIV治療薬)に関する新たなデータを、第32回 CROI2025で公表したもの。
Apretudeを使用した際のHIV予防効果を評価した2つの販売後臨床試験において、HIVの新規感染は無かった。また、ApretudeはHIV予防の普及率向上と、毎日服薬が必要な経口予防薬では解決の難しい服薬アドヒアランスに関する課題の解消に寄与し、HIV予防において重要な役割を果たすことが示された。
一方、Cabenuvaを使用したHIV治療については、リアルワールド研究において、多様な背景をもつ患者に対して有効性を示すことが改めて確認された。さらに、多くの患者がCabenuvaによる治療を適切に継続できていることも把握された。
pretudeの予防効果を評価したPILLAR研究では、HIV感染リスクが高い男性201人を対象に、12か月間におけるApretudeの有効性、継続率、安全性および忍容性を評価した。その結果、12か月間の追跡期間中にHIV感染は0件であり、Apretudeの継続率は6か月時点で85%(171/201人)、12か月時点では、データカットオフ後に試験を終了した5名を除き、72%(142/196人)という高い数値を示した。
また、安全性について新たな懸念は認められず、最も多く報告されたのは注射部位の痛みで、その発生率は3%(6件)にとどまった。
pretudeの予防効果とアドヒアランスを評価したImPrEP CAB Brazil研究では、HIV予防のためにApretudeまたはツルバダ(経口のHIV予防薬)のいずれかを選択できる、HIV感染リスクの高い18-30歳の若年層1447人を対象に、HIV感染率と予防薬のアドヒアランス(追跡期間中に予防薬を使用した期間)を評価した。
また、同じ期間にブラジルの公衆衛生システムを通じて、経口予防薬の使用を開始した2263人を対照群として評価した。
その結果、1447人の参加者のうち83%(1200人)がApretudeを選択し、追跡期間中のHIV感染は0件であった。一方、対照群では8件のHIV感染が報告された。
また、追跡期間中の予防薬のアドヒアランスは、Apretude群が96.2%、ツルバダ群が64.1%、対照群が最も低い47.4%であった。
Cabenuvaの有効性を評価したOPERA研究では、Cabenuvaによる治療をうけている多様な背景の患者において、長期的なウイルス抑制効果を評価した。米国の大規模コホートでは、2,485人(黒人42%、ヒスパニック系30%を含む)を対象に中央値11か月の追跡期間中、95%がウイルス量50コピー未満の抑制状態を維持し、中央値7か月後に1%(n=21)の被験者でウイルス学的失敗が確認された。この結果は、24か月までの長期にわたり、BMIの低 (<30 kg/m²) および高 (≥30 kg/m²) の両グループでも一貫して確認された。
さらに、381人のHIV陽性女性を対象としたコホートでは、中央値12か月の追跡期間中に94%がウイルス抑制を維持し、ウイルス学的失敗は1.3%以下(n≤5)であることが示された。
Cabenuvaによる治療の適切な継続状況を評価したTrio Healthコホート研究では、Cabenuvaによる治療を開始した928人を対象に治療が適切に継続されているかを評価した。
その結果、中央値12か月の追跡期間中、89% (6176/6934回) が投与スケジュールの遅延なく(目標投与日から7日以内)Cabenuvaの投与を完了しており、多くの患者が適切に治療を継続していることが確認された。さらに、95%の患者がウイルス量50コピー未満の抑制状態を維持し、ウイルス学的失敗は1.6%以下(n=15)であることが示された。
なお、これらの試験結果が2025年3月期の連結業績予想に与える影響は軽微である。