ロート製薬は5日、女性の膣内フローラに関する研究において、乳酸球菌/ヒアルロン酸発酵液(乳酸発酵ヒアルロン酸)が選択的に抗菌作用をもつ可能性を明らかにしたと発表した。
乳酸発酵ヒアルロン酸が有益な菌である乳酸菌には影響を与えず悪玉菌を選択的に抑制し、乳酸発酵ヒアルロン酸が濃度依存的に悪玉菌の増殖を抑制することを確認したもの。今後、デリケート部位の健康に寄与する新しい製品開発への応用が期待される。

近年、デリケート部位に対する関心が高まっている。特に、膣のpHやプロバイオティクスなど、膣環境をサポートする機能に着目した洗浄剤や保湿剤などの製品が注目を集めている。この背景には、膣内フローラに関する理解の深まりや、感染症・不快感への意識の向上、さらにはデリケート部位のセルフケアに対する認識の広がりがあると考えられる。
健康な膣内フローラは、細菌性膣炎(BV)のような感染症の予防や、免疫力向上など女性の健康維持に重要な役割を果たす。特に、乳酸菌の一種であるLactobacillus crispatus(L. crispatus)は、膣環境の維持と密接に関連しており、高い乳酸産生能力によって膣内を最適なpHに維持し、悪玉菌の増殖を抑制する(図1a)。そのため、L. crispatus が膣内に定着し、優勢であることは健康な膣内フローラの特徴の一つと考えられる。
一方で、Gardnerella vaginalis(G. vaginalis)は嫌気性通性病原菌で悪玉菌の一つとして知られ、膣内フローラのバランスを崩すことでBVの主な原因となる(図1b)。BV は、膣分泌物の悪臭、不快感、感染リスクの増加などの症状を引き起こし、膣環境に深刻な影響を与える可能性がある。
今回、ヒアルロン酸に関する幅広い研究の結果から、膣内フローラのバランスをサポートする成分として「乳酸発酵ヒアルロン酸」に着目した。同研究では、G. vaginalis および、L. crispatusに対する作用を確認した。
その結果、乳酸発酵ヒアルロン酸とG. vaginalis を共培養したところ、乳酸発酵ヒアルロン酸は、0.0075%以上の濃度でG. vaginalisの増殖を有意に抑制した(図2)。さらに、G.vaginalisに対する抗菌作用は濃度依存的に強まることが確認された。

乳酸発酵ヒアルロン酸は濃度依存的にG. vaginalis の増殖を抑制した一方で、L. crispatus の増殖状態には有意な差は無く、顕著な増殖抑制効果は観察されなかった(図3)。

以上の結果から、乳酸発酵ヒアルロン酸はG. vaginalisに対して選択的に抗菌作用を示し、L. crispatus のような有益な菌には影響を与えない可能性があることが示唆された。この結果は、乳酸発酵ヒアルロン酸が特定の細菌種にのみ作用する選択的なメカニズムを有する可能性を示唆している。
同研究成果により、膣環境の健康維持に対する新しいアプローチの可能性が期待される。ロート製薬は、今後、膣内フローラに対する基礎研究や膣内フローラのバランスをサポートする新たな成分の探索を進めていくともに、社会の膣の健康に関する理解を深め、女性のQOL向上やウェルビーングに貢献する製品開発を目指していく。