肥満症患者の自身の偏見の強さが浮き彫りに
BMIは遺伝的要因が約70%寄与
日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、日本における肥満や肥満症およびその治療に関する認知や理解、および肥満症のある人が抱える課題を把握するため、肥満症患者、医師、および一般生活者を対象に「肥満症に関する肥満症のある人・医師・一般生活者への意識調査」を実施した。
その結果、肥満に至る理由について、一般生活者の7割、肥満症患者の9割近くが「本人の責任」であると認識していることが明らかになった。肥満症患者では、その認識がさらに強く、肥満症患者の約3人に2人(63%)が「100%自分の責任である」と考えていることも判明。この考えは医師においては6%、一般生活者においては23%であることから、肥満症患者のセルフ・スティグマ(自身の偏見)の強さが浮き彫りとなった。
肥満症は、肥満かつ肥満に起因ないし関連する健康障害がある状態の慢性疾患である。肥満に至る要因は、個人の生活習慣のみならず、遺伝や環境、身体的、心理的、また社会的な要因などが複合的に組み合わさっており、自分の努力だけでは解決が難しいとされている。例えば、BMIに関しては、遺伝的な要因が約70%寄与しているという報告もある。それにもかかわらず、一般社会において、肥満の要因は自己管理能力の欠如にあるという偏見や差別(オベシティ・スティグマ)が存在し、本人の努力不足や生活習慣の改善にフォーカスされがちだ。そのようなスティグマは、医療現場や肥満症患者本人の中にも存在している。
肥満症は個人の責任ではない
肥満症の適切なケアには肥満に対する偏見解消の取り組みが重要に
◆同調査監修の益崎裕章琉球大学大学院医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)教授のコメント
肥満症は、QOL(生活の質)の低下だけでなく、既に患っている病気の悪化や、新たに他の健康障害を引き起こすリスクがある慢性疾患である。保険診療による治療が可能なので、適切な治療を受けることによって、既に持っている健康障害の改善や新たな健康障害の予防が期待できる。
これまでは治療の選択肢が限られていたこともあり、他の慢性疾患と同じレベルの必要な治療が肥満症に対しては必ずしも充分にはなされて来なかった。今回の調査により、肥満に対するスティグマ(オベシティ・スティグマ)が予想以上に根強いことも明らかになった。オベシティ・スティグマが肥満症治療の妨げとなってきた可能性も大いに考えられる。肥満症は、決して個人の責任ではない。
肥満症のある人が適切なケアを受けてよりよい人生を送るためには、本人や医療関係者を含む社会全体で、肥満や肥満症を正しく理解し、オベシティ・スティグマを解消していく取り組みが重要である。
肥満症に関する肥満症のある人・医師・一般生活者への意識調査の調査概要、主な調査結果は次の通り。
[調査概要]
◆調査主体:日本イーライリリー、田辺三菱製薬
◆実査:社会情報サービス
◆調査手法:インターネット調査
◆調査地域:日本全国
◆監修:琉球大学大学院医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科) 益崎裕章氏

[主な調査結果]
【肥満は誰のせい?】
一般生活者7割、肥満症患者9割が「肥満は自己責任」と考えており、多数派であることが明らかに
肥満症患者が持つ強い自己責任意識(セルフ・スティグマ)は、一般生活者が持つスティグマよりも大きい
「100%本人の責任」と「本人の責任が大きい」を合わせると、患者87%、医師64%、一般生活者70%が、肥満は「本人の責任」と考えている。患者・医師を含む社会全般において、オベシティ・スティグマ(肥満に対する偏見)が存在することが明らかとなった。
患者の約3人に2人(63%)が肥満は「100%本人の責任」と回答し、医師6%、一般生活者23%と比較して高い結果となった。
<「肥満」の責任の所在>
Q.「肥満」は、誰にそうなった責任があると思いますか。あなたのお考えに最も近いものをお知らせください。(チェックは一つ)

【肥満症はどうやって解決すべき?】
患者の34%、一般生活者の41%が、科学的な根拠を示され「肥満や肥満症は複合要因で起こる」と知っても、「自分の努力だけでは解決が難しい」ことに「同意」しないと回答
「肥満や肥満症には、個人の環境・生活習慣因子に加えて、遺伝的因子や薬剤の使用、心理的因子など 複数の要因が関与する」と提示され、そのことを知っても、「自分の努力だけでは解決が難しい」ということに「同意」しない人は、肥満症患者で34%、一般生活者は41%にのぼった。
<「肥満」の要因に関する考えの同意度>
Q.“「肥満」は複数の要因が組み合わさって起こるため、自分の努力だけでは解決が難しい”という考えについて、どの程度同意されますか。あなたのお気持ちに最も近いものをお知らせください。

・「肥満や肥満症は複数の複合要因で起きる」と提示され、そのことを知っても、今後取り組みたい体重管理の方法について聞くと、“病院で受けた食事・栄養指導”や、“病院で指導された運動”、“保険診療で処方される薬”といった医療介入を選択する肥満症患者は、それぞれ3割未満にとどまった。
<「肥満」が複合要因で起きる前提での、今後の取り組み>
Q.「肥満は複数の複合要因で起きる」という前提で考えた場合、あなたは今後、ご自身の体重管理にどう取り組んでいこうと思いますか?あなたが今後行うであろう、体重管理に関する取り組みを、下記からすべてお知らせください。

・(それぞれ異なる)自身の考える肥満や肥満症の要因について、7割近くが「理由はないが、なんとなくそう思っている」と回答した(肥満症患者、一般生活者)。
<「肥満」が起こる要因を挙げた経緯>
Q.「肥満」という状態が起こる理由について、あなたがそのように考えるようになった経緯を、すべてお知らせください。

【肥満症治療に対する見解】
肥満症は「治療が必要」という人が肥満症患者・医師・一般生活者ともに約7割を超える。しかし、いざ保険診療で治療するとなると、一部の回答者には抵抗感が見え隠れする
・肥満症は、他の病気と同等またはそれ以上に「治療が必要」と回答した患者は78%、医師は87%、一般生活者69%であり、すべての層で約7割以上に上った。肥満症の治療の必要性については社会全体で認識が高い傾向が明らかとなった。
<「肥満症」治療の必要性>
Q.あなたは、「肥満症」の治療の必要性について、どうお考えですか。あなたのお気持ちに最も近いものをお知らせください。

・保険診療で肥満症治療が積極的に行われることについて、特に一般生活者の約半数が「好ましいと思わない」または「どちらともいえない」と回答した。
<今後、保険診療で「肥満症」治療が積極的に行われることへの好ましさ>
Q.今後、病院の保険診療で「肥満症」の治療が積極的に行われるようになった場合、あなたはどう思いますか。あなたのお気持ちに最も近いものをお知らせください。

【体重に関するコミュニケーション意向】
肥満症患者も医師も、体重について“話したいが話題にしにくい”現状。話しにくさの根源にはスティグマという共通の課題
「恥ずかしいから」と思っている医師と、実は「本人の責任だから」と思っている肥満症患者で、異なるスティグマを抱える
・診療時、体重に関する話を「聞きたい」患者が79%、医師が92%。しかし、両者とも体重に関して「気軽に話せる」かどうかについては半数近くが「気軽にできる」と回答しなかった。
<医師から自身の体重についての話を切り出されることへの感じ方> <体重について医師に(患者に)相談・話題にすることの気軽さ>
Q. 現在/過去に、何らかの病気の治療のために通院している/通院していた医療機関で、医師から体重に関して話を切り出される/切り出されたことを、あなたはどう感じますか。あなたのお気持ちに最もあてはまるものをお知らせください。
Q. 現在/過去に、何らかの病気の治療のために通院している/通院していた医療機関で、医師に自身の体重について相談すること、あるいは話題にすることは、あなたにとってどの程度気軽にできる/できたことですか。あなたのお気持ちに最もあてはまるものをお知らせください。

・気軽に話せない理由は、「(患者さんが)恥ずかしいから」と思っている医師に対し、肥満症患者は「体重管理は医師の仕事ではなく、本人の責任だから」が最多であった。
<医師に体重について気軽に相談・話題にできない理由>
Q.(体重について医師/患者と気軽に話せるかどうかについて、「気軽にできない/できなかった」、「あまり気軽にできない/できなかった」または「どちらとも言えない」と回答した理由について、)あなたがそのようにお感じになる理由をすべてお知らせください。
