第一三共ヘルスケアは21日、現在または過去にがん罹患経験のある働く女性を対象に「がん治療中の肌ケアに関する意識調査」結果を公表した。
同調査では、がんの治療中に「肌ケア」を行って効果を実感した人の約8割が「前向きになれた」などポジティブな心境の変化があったと回答。治療による外見変化に約6割が不安を感じる中、対策したい人のうち約6割が「どの情報が自分に適しているか分からなかった」と回答した。
2人に1人ががんになる昨今、治療と仕事の両立が課題となる20~50代でも多くの人が、がんを経験している。特に30・40代では、男性よりも女性においてがん罹患者数が多くみられる。
こうした中、がん治療では皮膚トラブルが生じたり、バリア機能が低下したりするため、多くの人が肌の悩みを抱えている状況にある。そこで同調査では、がんにおける「肌ケア」の実情と効果を確認した。調査結果の概要および詳細は次の通り。
【調査結果の概要】
1、がん治療でつらかった症状として、約5人に1人が「肌トラブル」と回答。「肌トラブル」がつらかったと感じた人のうち、なにか対策をしたいと思ったが「どの情報が自分に適しているか分からなかった」人が約6割にも。
・治療(薬物療法の副作用等)でつらかった症状を聞いたところ、約5人に1人が「肌トラブル(シミ・くすみ、乾燥・ニキビ等)」と回答。また、その「肌トラブル」によって起こった心境の変化についての質問では、約半数が「他人の視線が気になった」と回答した。
・がん治療によって起こった外見の変化について聞いたところ、約6割が不安を感じていた。
治療によって起こった「肌トラブル」に対して「なにか対策をしたいと感じた」人が約4割おり、そのうちの約6割が「どの情報が自分に適しているか分からなかった」と回答した。
2、治療中、最も行われていた肌ケアの目的は「乾燥」。肌ケアを行った人のうち約6割が効果を実感。
・がん治療中に肌ケアを行っていた人は約7割に上った。
・治療中に行われた肌ケアの目的で最も多かったのは「乾燥」で、約半数を占めた。
・肌ケアを行った人の約6割が効果を実感できたと回答した。
3、 肌ケアで効果を感じた人の約8割に、人とのコミュニケーションや治療に 「前向きになれた」などポジティブな心境の変化が。
・肌ケアで効果を実感できたと回答した人の約8割が人とのコミュニケーションや治療に「前向きになれた」「QOLが向上した」などと回答し、外見だけでなく内面にもポジティブな変化をもたらしたことが分かった。
【調査結果の詳細】
1、 がん治療中でつらかった症状として、約5人に1人が「肌トラブル」と回答。 「肌トラブル」がつらかったと感じた人のうち、なにか対策をしたいと思ったが「どの情報が自分に適しているのか分からなかった」人が約6割にも。
がん治療(薬物療法の副作用等)でつらかった症状を聞いたところ、全体の約 5 人に 1 人が「肌トラブル(シミ・くすみ、乾燥、ニキビ等)」と回答した【図1 】。
がんの治療によって起こった外見の変化について聞いたところ、「外見の変化による不安」について「不安に感じた」と答えた人が約6割を占めた。また、がん治療でつらかった症状で「肌トラブル」と回答した人に、それによる心境の変化についても聞いたところ、「他人の視線が気になった」人が約半数と最も多く、「なにか対策をしたいと感じた」人が約4割となった【図2】。
さらに「なにか対策をしたいと感じた」と回答した人のうち、「情報は見つかったけれど、どれが自分に適しているか分からなかった」人が約6割、「情報は見つかったけれど、どれを信じていいか分からなかった」人が4割以上に上ることから、がんの治療に際して多くの人が「肌ケア」の正しい情報を求め探している実情がうかがえる【図3】。
2、 治療中、最も行われていた肌ケアの目的は「乾燥」。 肌ケアを行った人のうち約6割が効果を実感。
がんの治療中に肌ケアを行っていた人は約7割おり【図4】、肌ケアを行っていた人のうち、治療中に発生した肌トラブルに対するケア目的は「乾燥」が約半数と、最も多い結果となった。また、「肌荒れ」のほか「シミ・くすみ」も3割台となるなど、外見上の悩みも見られた【図5】。肌ケアを行った結果、約6割がその効果を「実感できた」(実感した+どちらかというと実感した)と回答した【図6】。
3、 肌ケアで効果を感じた人の約8割に、人とのコミュニケーションや治療に「前向きになれた」などポジティブな心境の変化が。
肌ケアを行った結果、その効果を「実感した」(実感した+どちらかというと実感した)と回答した人のうち、約8割が「前向きになった」や「QOLが向上した」など、心境への変化があり【図7】、中でも「人とのコミュニケーションに前向きになれた」が最も多い回答となり、「治療に前向きに取り組めた」と「QOLが向上した」が続く【図8】。
◆村橋紀有子氏(アピアランス・サポート東京 アピアランス・サポート相談室室長)に聞く「がん患者さんにおける肌ケアの重要性とは」
抗がん剤などの化学療法によって起こる脱毛やその他外見変化に悩む人々の苦痛を軽減する支援を行うアピアランス・サポート東京の村橋氏が同調査を踏まえて「肌ケア」について解説した。
がん治療中の「肌ケア」の実状
アピアランス・ケアにおいて多くの患者さんが悩むのは、外見の変化が目に見える脱毛の問題である。治療の後半に近づくにつれ、肌の変化も徐々に現れるが、多くの人が脱毛に気を取られ、肌ケアへの意識が後回しになっているのが現状である。
がん患者の「肌ケア」3つのポイント – 保清・保湿・保護
がん治療によって全身の乾燥が進むため、「肌ケア」では保清・保湿・保護の3つを意識することが重要である。治療中はバリア機能が低下し、肌トラブルが起こりやすくなる傾向にあるため、通常のケアに加え、保湿や保護を強化したケアが必要である。保湿成分の高い入浴剤を使用することや、家事の際に手袋をする、また、治療中の日焼けは肌へのダメージを大きくするため、できるだけ日焼けを防ぐ対策をするようお勧めしている。
例えば、お子さんの送り迎えや洗濯物を干す際など、日常のちょっとした場面でも注意が必要である。肌を清潔に保ち、保湿で肌のバリア機能を整え、外部刺激を防ぐことは、治療中の生活において非常に重要となる。
「肌ケア」習慣ががん患者QOL向上に
自分をいたわる時間を持つことも大切である。がん治療を受けている中で肌ケアの方法を身につけ、それを日常的な習慣にすることは、QOL向上につながる。外見が変わることで自信をなくしたり、生活を送る上で苦痛を抱えたりすることも少なくない。肌ケアを通じて自身を大切にすることで、治療中だけでなく、これからの生活にも良い影響を与えると考えられる。
がん治療による肌トラブルに悩む患者さんへ
「肌ケア」は外見を整えることにとどまらず、自分自身を癒し、心に安らぎを与える貴重な時間である。このひとときを大事にしながら、自分らしい暮らしを心がけていただきたいと思う。治療中の時間もかけがえのないものである。ぜひ、肌ケアを日々の習慣に取り入れ、自分をいたわりながら、少しでも穏やかで心地よい時間を過ごしていただきたいと思う。