武田薬品の皮下注用人免疫グロブリン製剤およびボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)製剤「ハイキュービア」は、昨年12月27日、「無または低ガンマグロブリン血症」を効能・効果に厚労省から製造販売承認を取得した。
無または低ガンマグロブリン血症は、原発性免疫不全症(PID)または続発性免疫不全症(SID)による抗体が無いまたは減少した状態で、重篤な感染症の再発リスクが増加することを特徴とする疾患である。
同承認により、日本初かつ唯一の促進型皮下注用免疫グロブリン製剤(fSCIG)を日本の適用となる患者に治療選択肢として提供できる。
ハイキュービアは、皮下注用人免疫グロブリン(以下「SCIG」)10%製剤1バイアルとボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え、rHuPH20)製剤1バイアルを組み合わせた本邦で初めての促進型皮下注用免疫グロブリン製剤である。rHuPH20を投与し皮下組織の透過性を一時的に高め、その後同じ部位にSCIG10%を投与することで、SCIG10%の拡散と吸収が促進され、大量投与が可能になる。
静脈路の確保が不要という皮下投与製剤の特徴に加え、大量投与により投与頻度を従来の皮下投与製剤に比べて軽減することが可能である。従来の皮下投与製剤の投与頻度が1週または2週間隔であるのに対して、3週または4週間隔となり、無または低ガンマグロブリン血症患者への貢献が期待される。
同承認は、主に有効性、安全性、忍容性および薬物動態を評価するために実施された日本人のPID患者を対象とした2つの主要な非盲検非対照P3試験(TAK-771-3004試験NCT05150340、TAK-771-3005試験NCT05513586)に基づくもの。
2歳以上の日本人患者16例を対象にしたこの臨床試験により、ハイキュービアの有効性と安全性が評価された。最後の3回の来院におけるIgGトラフ値の幾何平均値は9.494g/Lであり、静注または皮下注用人免疫グロブリン製剤による治療(IgGトラフ値の幾何平均値9.624g/L)と比較し同程度に維持された。
主な副作用は、発熱5例(31.3%)、注入部位紅斑、注射部位紅斑、注入部位腫脹、注入部位疼痛及び頭痛2例(各12.5%)であった。 同製造販売承認申請の評価資料には、北米のPID患者を対象とした2つの海外P3試験(160603試験NCT00814320、160902試験NCT01175213)も含まれている。
同承認により、武田薬品は、個々の患者の投与ニーズに基づいたSCIG製剤群を提供することが可能となる。これは、日本の大阪における血漿分画製剤の新製造施設建設に向けた投資計画の発表に続き、日本の患者に幅広い治療選択肢を提供する同社のコミットメントを示すもの。ハイキュービアは、現在、「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(多巣性運動ニューロパチーを含む)の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)」を予定する効能・効果とした製造販売承認申請を審査中である。
◆廣田直美武田薬品PDTビジネスユニット R&D Japan リージョナルヘッドのコメント
世界40カ国以上で承認されているハイキュービアが、日本で承認されたことを嬉しく思う。現在日本で承認されている無または低ガンマグロブリン血症患者さんのための皮下投与製剤は週1回または2週間に1回の投与が必要である。
投与頻度が従来の皮下投与製剤より少ない3週または4週間隔の日本初かつ唯一の促進型皮下注用免疫グロブリン製剤をお届けできることを誇りに思う。
◆Kristina Allikmets武田薬品PDビジネスユニット研究開発部門ヘッドのコメント
日本においては、血漿分画製剤に対する高い患者さんのアンメットニーズがあり、啓発と早期の診断率が上がるにつれてニーズが高まることが予想される。
日本初かつ唯一の促進型皮下注用免疫グロブリン製剤であるハイキュービアの承認は、日本の患者さんの標準治療の向上に対する当社のコミットメントを示すものだ。今後も、当社の本拠地である日本の患者さんの生活を支え、より良いものにする新しい治療選択肢を提供していく。