アッヴィ合同会社は9日、atogepantについて、日本人の片頭痛患者を対象に52週間にわたる長期の安全性および忍容性プロファイルを示した国内P3試験で長期安全性および忍容性を裏付ける結果を得たと発表した。同試験結果は、第52回日本頭痛学会総会で公表された。
atogepantは、成人の片頭痛の予防治療薬として開発された経口投与のCGRP受容体拮抗薬である。CGRPとその受容体は、片頭痛の病態生理に関与する神経領域に発現する。片頭痛発作時にはCGRP濃度が上昇し、選択的CGRP受容体拮抗薬が片頭痛に臨床効果をもたらすことが研究により明らかになっている。
国内P3試験では、長期(52週)安全性試験(3101-306-002 試験)において、日本人の片頭痛患者186名(慢性片頭痛(Chronic Migraine:CM) n=155、反復性片頭痛(Episodic Migraine:EM) n=31)を対象にatogepant予防投与における長期安全性および忍容性を評価した。
その結果、atogepantの忍容性は良好で、同試験の長期投与期間における安全性データは、これまでに確認されたatogepantの長期安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性のシグナルは認められなかった。
atogepant(欧州連合ではAQUIPTA)は、月間片頭痛日数(MMDs)が4日以上の成人における反復性片頭痛または慢性片頭痛の予防薬として、昨年8月に欧州委員会により承認されている。
片頭痛は、反復性の発作を伴う複雑な神経疾患であり、しばしば日常生活に支障をきたす。重度の拍動性の頭痛に加え、極度の光過敏や音過敏、悪心等の複数の随伴症状を特徴とする。有病率は高く、米国だけでも4000万人近く、世界全体で10億人以上が罹患しており、50歳未満における生産性低下の主要原因となっている。
慢性片頭痛の患者は、1か月に15日以上頭痛または片頭痛を発症し、そのうち8日以上は片頭痛に関連するものだ。1か月に0~14日の頭痛を特徴とする反復性片頭痛と比べ、慢性片頭痛は頭痛および片頭痛の発症日数が高頻度で合併症の有病率も高く、消耗性の高い病態を有する場合もあるため反復性片頭痛とは区別されている。
慢性片頭痛の患者は、頻繁に動けなくなるほどの片頭痛発作により日常の活動が妨げられ、生活の質に多大な影響を受けることもある。そのため、この消耗性疾患は、患者だけでなく、社会や家族にとっても負担となっている。慢性片頭痛は、重大な直接的・間接的コストの問題も有しており、患者や医療システムに経済的負担をもたらす。