文部科学省・科学技術振興機構が主宰する「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」川崎拠点は、11月1日付で「かわさきケアデザインコンソーシアム」を設立し、企業会員と准会員の募集を開始した。 同コンソーシアムの開設は、急速な高齢化が医療ニーズの増加・複雑化を招く一方で、少子化による医療人材の不足が顕在化する中、ケア現場のニーズに応えられる製品・サービスを速やかに社会実装させる共同体としての役割を目的としたもの。
高齢化率(65歳以上の人数が人口に占める割合)で世界のトップを走る日本では、高齢化による患者増と少子化による医療従事者不足といったアンバランスな状況が、将来の我々の健康生活に暗い影を落としつつある。
病院の病床数には限界があり、コロナ禍時と同様に比較的体調の良い人は在宅療養が求められる。病院では医師や看護師が24時間つきっきりでケアできるが、在宅でそれは容易なことではない。従って、家族や本人でも扱えるケア用品の普及(コロナ禍では、パルスオキシメータが重宝されました)とケアコンピテンシー(ケアする力)の啓発が必要となる。
また、病院においても、医療従事者の大多数を占める看護師の減少は医療の質の低下に繋がり、医療事故のリスク増大にもなることから、川崎市看護協会でも看護師の労働環境を改善するためのワーキンググループ(労働環境改善推進委員会)が、プロジェクトCHANGEとの協働を進めている。
少子高齢化に伴うケア現場の課題は、川崎市看護協会による調査およびプロジェクトCHANGE が行うシャドーイングにより多種多彩なものが数多く挙げられている。
また、2050年の市場規模が77兆円と試算されるヘルスケア産業への新規参入に興味を示す企業は7割とされるものの、様々な理由で参入を躊躇する企業が6割との調査結果もある。
このような現状を改善し、ケア現場のニーズに応えられる製品・サービスを速やかに社会実装させる共同体として「かわさきケアデザインコンソーシアム」は位置付けられている。12月1日発行の産業情報かわさき12月号では、同コンソーシアムの特集が組まれた。京浜工業地帯の中核として日本の高度経済成長に寄与した川崎市臨海部では公害対策にいち早く取り組んだこともあり、環境と健康をテーマとしたイノベーションクラスターの構築が進んでいる。
また、介護・福祉産業を支える同市のウェルフェアイノベーション政策も進行中であり、さらには全国で唯一の市看護協会との連携によりケア現場でのニーズ調査や実証研究を速やかに行える場が整っているなど、「かわさきケアデザインコンソーシアム」の立地条件は良好である。