直腸手術に用いる「NIRC蛍光尿道カテーテル」 12月より販売開始へ カーディナルヘルス

 国立がん研究センター東病院とカーディナルヘルスは、近赤外光照射下で蛍光反応を示すNIRC蛍光尿道カテーテルを共同開発し、カーディナルヘルスが12月に全国の医療機関への発売開始すると発表した。同製品は、本年3月に医療機器として承認されたもので、直腸の手術に用いられる。
 カーディナルヘルスは、2019 年に同じ蛍光樹脂を使用した NIRC蛍光尿管カテーテルを開発しており、NIRC蛍光尿道カテーテルは、カーディナルヘルスにとって2作目の蛍光カテーテルとなる。
 NIRC蛍光尿管カテーテルは、主に大腸や婦人科の手術の際に用いられるのに対し、NIRC蛍光尿道カテーテルは直腸の手術に用いられる。高齢化と食生活の欧米化から直腸がん患者は増加している。特に、日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいと言われている。
 今回、カーディナルヘルスと国立がん研究センター東病院は、NEXT 医療機器開発センターの支援のもと、直腸がんの手術の際、術者にモニタ越しに正確な尿道の位置を提示する NIRC蛍光尿道カテーテルを開発した。
 NIRC蛍光尿道カテーテルは、患者の尿道に挿入後、近赤外光カメラで近赤外光を照射すると体内のカテーテル挿入部位が蛍光反応とともにモニタ上に描出される医療機器で、術者は、モニタ越しに正確な尿道の位置を確認しながら手術を行える。
 直腸がんの手術においては、再発を防ぐため、がんから十分な切除範囲を確保する必要がある。同時に、直腸に近接する尿道損傷による合併症を避けるため、術者は尿道の位置を正確に認識することが重要である。

 近年、インドシアニングリーン(ICG)を用いた血流やリンパ管、特定の腫瘍を可視化する蛍光ガイド手術が広まっており、治療成績の向上に寄与することが報告されている。NIRC蛍光尿道カテーテルには ICG に類似した励起波長及び蛍光波長を有する蛍光樹脂が採用されている。近赤外光カメラでカテーテルに近赤外光を照射すると、カテーテルに含まれる蛍光樹脂による発光反応がモニタに描出される。

◆伊藤雅昭研究代表者(国立がん研究センター東病院 大腸外科長・医療機器開発推進部門長)のコメント
 外科医の発想が出発点となり、この蛍光尿道カテーテルが生まれた。この製品が、多くの患者さんを治すことに役立つことを希望する。これからも医療機器開発を推進し、患者さんに貢献できるよう努めていきたい。

◆長谷川寛国立がん研究センター東病院 大腸外科医員・医療機器開発推進部門手術機器開発推進室長のコメント
 術中の尿道損傷は治癒するまで時間を要し、患者さんの生活の質に大きな影響を与える。この製品が、術者が尿道を認識する一助となり、患者さんにより安全な医療が提供されることを期待している。

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