参天製薬は7日、ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫に対する脈絡膜上腔注入療法のARVN001について、革新的な眼科治療の開発に注力する中国のバイオテクノロジー企業である中国のArctic Vision社と販売提携契約を締結したと発表した。
ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫(UME)およびその他の特定の眼疾患治療用に開発しているトリアムシノロンアセトニド脈絡膜上腔注射懸濁液「ARVN001」と特許取得済みのSCS Microinjector技術(SCS = suprachoroidal spaces, 脈絡膜上腔)にかかる注射器のキットについて、台湾、香港、およびマカオを除く中国における販売提携契約を締結した。同契約に基づき、Arctic Vision社は参天製薬に対し、対象地域における独占的販売権を許諾する。
同契約に基づき、Arctic Vision社は、参天製薬から契約一時金、マイルストンとして最大で8500万ドルを受け取る。
ぶどう膜炎は、強膜(目を保護する外膜)と網膜の間にあり血管が豊富な組織である虹彩、毛様体、脈絡膜からなるぶどう膜に炎症が生じた症状で、重大な視力障害につながる可能性がある。
黄斑浮腫は、ぶどう膜炎患者さんによく見られる合併症であり、物を見るために最も敏感な部分である網膜黄斑部に液体が溜まることが特徴だ。
ARVN001は、独自に開発している脈絡膜上腔に投与するコルチコステロイドのトリアムシノロンアセトニド懸濁液である。ARVN001は、Clearside Biomedical社からArctic Vision社にアジア太平洋地域に関してライセンス供与されたもの。
米国ではすでにXIPEREのブランド名でUMEの治療薬として米国FDAの承認を取得しており、現時点では、米国において唯一の脈絡膜上腔に投与するUMEの承認済み治療薬である。
現在、他の網膜疾患に関してもArctic Vision社によって研究が進められている。2024年7月にArctic Vision社は、同製剤について、中国でのP3試験で良好なトップライン結果を得たと発表している。
Clearside社が特許取得済みのSCS Microinjector技術は、脈絡膜と強膜の間の脈絡膜上腔に薬剤を届けることを目的として設計されている。脈絡膜上腔への注入により、薬剤を眼の裏側に迅速かつ十分に分散させて、作用時間を延長したり、眼の周囲の健康な部位に対する悪影響を最小限に抑えることが期待されている。
参天製薬とArctic Vision社の戦略的提携により、相乗的なパートナーシップを実現。それぞれの専門知識とインサイトを活かした強固なコラボレーションにより、中国の眼科市場で両社が成功を収め、中国の UME患者の利益のために尽力する。
◆中島理恵Santen取締役チーフ オペレーティング オフィサーのコメント
新たな開発に取り組み続ける眼科バイオテクノロジー企業であるArctic Vision社との提携により、中国で初めての保険償還対象となり得るUME治療薬を患者さんに届けることができる。参天製薬にとって、今回の提携は、中国における後眼部疾患に関わるアンメットニーズに応える、新たな機会となると考えている。
◆Eddy Wu Arctic Vision社会長兼最高経営責任者(創業者、博士)のコメント
ARVN001は、中国において最初で唯一のUMEに対する脈絡膜上腔注射療法であり、Arctic Visionは、臨床試験から新薬承認申請段階までプログラムを進めるために取り組んできた。 今回、この最先端治療薬の販売に関し、高い営業能力を持つ参天製薬との提携が実現し、大変嬉しく思う。この治療法の可能性を最大限に引き出し、革新的な眼科治療を中国のUME患者さんと医療従事者に提供できるよう努めていく。