塩野義製薬の手代木功会長兼社長CEOは28日、2024年度中間決算説明会で会見し、「HIV事業や米国・欧州でのセフィデロコル(βラクタム系新規抗菌薬)が力強く牽引し、売上収益および各種利益項目は上期計画を全て過達で着地した」と強調。その上で、「2024年度通期連結業績予想は、売上収益・営業利益3期連続過去最高更新を達成できる」と力強く訴求した。
塩野義製薬の2024年度中間決算は、売上高2140億円(対前年同期比7.2%減)、営業利益759億円(22.7%減)、税引前中間利益938億円(18.8%減)、親会社の所有者に帰属する中間利益831億円(8.2%減)となった。 同中間期は、2023年度に計上されたADHD治療薬のライセンス契約移管に伴う一時金250億円の影響により対前年同期比では減収・減益となったものの、一時金を除けば増収増益となった。
また、同中間期の一般用医薬品の売上収益は82億円で、通期166億円を見込んでいる。手代木氏は、「5年前にOTC部門を独立させるまでは70億円前後(通期)の売上高であったが、その後は5年連続増収・増益を示しており、OTCでトップ10入れできるところまで成長した」と評価した。
同社業績の好調要因となっているHIV事業については、「HIV治療はこれまで3剤合剤がスタンダードであったが、ヴィーブ社が開発したドルテグラビルとカボテグラビルの2剤レジメン(Dovato)や、長時間作用型(LA)製剤がアンメットメディカルニーズを満たして予想を上回る成長をみせている」と明言。セフィデロコルも「米国で1120億円(前年同期比37.9%)、欧州で83億円(同35.7%)と力強く成長しており、中国での承認も受理された」と報告した。
COVID-19関連製品+インフルエンザファミリーの上期予想は327億円であったが、78億円下回る249億円となった。「特にインフルエンザが殆ど流行しなかったのが大きな要因で、営業活動は十分に行った」と振り返る手代木氏。抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」のウイルスの伝搬抑制効果にも言及し、「P3試験で同居家族の感染リスクを29%低減することが示された。この新たな価値を、多くの患者さんが希望する‟1回のみの飲み薬”として提供していく」戦略を示した。
一方、新型コロナ治療薬「ゾコーバ」は、昨年の公的補助が合った時の期経口剤トータルとしての新型コロナ治療率は23%程度あったが、4月より30%の保険負担が始まって一時9%台まで落ちた。
手代木氏は、「治療率は、その後6カ月かけて13.4%まで上昇させた。次の目標は20%に置いている」と説明し、「ゾコーバのマーケットシェアは現在70.2%で、特に重症化リスクを持つ患者において処方が拡大している」と説明。その上で、「今後は、重症化リスク要因の有無を問わず新型コロナ治療薬としてさらなるゾコーバの認知度を向上させていく」と訴えかけた。
また、本年4~9月にかけて新型コロナの入院患者が増加しており、「治療率の低下と入院患者の増加は無関係ではない。まだまだ新型コロナはリスクの高い疾患なので、ロングコビット(罹患後の後遺症)も含めてゾコーバによる早期治療の重要性を訴求していく」と語った。
塩野義製薬では、ネクセラファーマジャパンと販売提携契約を締結した不眠症治療薬「クービビック」の上市を皮切りにQOL疾患領域を新たな柱とする戦略を打ち出している。国内では、現在、不眠症治療薬として、「ベルソムラ」(MSD)、「デエビゴ」(エーザイ)が高いマーケットシェアを誇る。こうした中、クービビックは、EUでオレキシン受容体拮抗薬として承認されているの唯一の薬剤で、非常にポテンシャルが高い。手代木氏は、「後は、我々の腕の見せ所」と強調した上で、「ピーク時にはこの2剤同様に200億円~250億円の売上高を目指したい」と期待を寄せた。
同社は、2025年8月中旬を目途に現本社(大阪市中央区道修町)を大阪市北区のうめきた2 期地区開発事業「グラングリーン大阪」内に移転する。手代木氏は、「現本社は、耐震面は安心だが、コンピュータ設備等を勘案すればPCTに基づく国際出願が弱点となっている」と指摘し、「PCT面でも改善されたグローバル本社を開設するために移転する。欧米の仲間からも歓迎されている。また、4~5箇所に別れている各部署が一堂に会することも大きい」とそのメリットを挙げた。