長期収載品の選定療養施行でも強く望まれる後発品の安定供給

 先発品の長期収載品と薬価が最も高い後発品との差額の1/4を選定療養として保険適用外とし、患者に負担を求める長期収載品の選定療養が、10月1日よりスタートした。 
 長期収載品の選定療養は、ドラッグラグ、ドラッグロスを解消するための一部資金に当てることを目的とした施策だ。海外で使用され、日本では承認されていない薬剤は143品目あり、そのうち83品目は日本国内で臨床試験もスタートしていないのが現状だ。日本の医療現場において、これらの是正が早急に望まれるのは言うまでもない。
 長期収載品の選定療養は、スタートして20日余り経過した。医療現場からは「もう少し政府の方から告知して欲しかった」という意見が出ているものの、現状ではまだ大きなトラブルは起きていないようだ。
 保険薬局の話によると「先発品を希望する患者は、1000円程度の差額負担が出ても差支えないと考えている人が多い」という実情が、トラブルが少ない要因となっている。85%が後発医薬品に切り替わっている現状において、この制度によって先発品から後発品に切り替える患者が少ないこともトラブルの少なさに起因する。
 だが、その一方で、「後発品が安定供給されていないため、薬局に後発品が無い場合は、選定療養の対象にはならない」という課題を残している。「先発品を希望する患者であっても、その人が選択する薬局の都合で患者負担はゼロになる」という不公正が生じているからだ。加えて、品目によっては後発品が日々変わってくるため、新たに後発品に切り替えた患者は戸惑いを隠せない。
 選定療養をスタートする前に後発品の安定供給を図っておくべきであったのは明白だ。とはいえ、後発品の医療現場への供給不足は3年以上も改善されておらず、この先もその是正は定かではない。
 昨年大阪府薬剤師会が実施した医薬品の流通状況のアンケート調査では、大阪府下3534薬局のうち1628 薬局(45.67%)が回答。そのうち、「希望通り医薬品が供給されている」と答えたのはわずか2薬局に過ぎなかった。「納品が滞り、調剤業務に影響が出る場合がある」が1128薬局、「製品が流通していないため発注ができない場合が多くある」が424薬局を占めた。
 また、後発医薬品の入手状況が「 改善している」と答えた薬局は僅か8%(131軒)にとどまり、「状況が悪くなった」、「変わらない」と答えた薬局の合計が92%(1497軒)に上り、「状況は全く良くなっておらず、袪痰薬などむしろ悪くなっている品目も増えている」この傾向は、全国的にもほぼ同様であると聞く。
 医療現場での後発品不足は、2020年12月、小林化工が製造した抗真菌薬(爪水虫治療薬)への睡眠導入剤成分の混入から端を発する。その後、日医工の業務停止など各後発品メーカーのGMP遵守違反が次々と明らかになり、後発品の販売停止・回収等が頻繁に行われた。
 当初、日医工の業務停止を受けて抗アレルギー剤の不足が多かったが、その後、降圧剤や、ビタミンD3、骨粗鬆症薬などの不足にまで影響が拡大。後発品不足は、それに替わる先発品不足も相まって、今や医薬品供給がままならない深刻な状況下に陥っている。
 奇しくも今回の長期収載品の選定療養のスタートで医療現場の後発品不足による課題が改めて浮き彫りになった。これを契機に国はさらなる後発品の安定供給策をしっかりと行い、後発品メーカーも‟倫理観”と‟責任感”を持って真摯に対応するべきことを訴求したい。
   

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