早期アルツハイマー病治療薬「ケサンラ点滴静注液」承認取得 日本イーライリリー

 日本イーライリリーは24日、早期アルツハイマー病(AD)治療薬「ケサンラ点滴静注液」(一般名:ドナネマブ)について、「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」を効能・効果として、日本における製造販売承認を取得したと発表した。
 ケサンラは、アミロイドβプラークを標的とする早期AD治療薬。4週間隔で少なくとも30分以上かけて点滴静注することにより、脳内に過剰に蓄積したアミロイドβプラークを除去する。アミロイドPET検査によりアミロイドβプラークの除去が確認された時点で投与を完了する。アミロイドβプラークの除去が確認されない場合であっても、同剤の投与は原則として最長18ヵ月で完了する。
 ケサンラの投与完了により、当事者および介護者の身体的、精神的な負担を軽減することが期待される。
 ケサンラは、アミロイドβ病理を示唆する所見が確認された60~85歳の早期ADの方を対象に、安全性および有効性を評価したTRAILBLAZER-ALZ 2試験の結果に基づいて承認された。TRAILBLAZER-ALZ 2試験では18ヵ月にわたり、参加者の臨床的進行を評価した。
 主要評価解析は、早期ADの中でもより早い段階にある参加者(脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度、Mini-Mental State Examination (MMSE) スコア平均値約23)と、より進行した段階にあることを示す脳内タウ蓄積レベルが高度の参加者を含む参加者全体(MMSEスコア平均値約22)を、ケサンラ投与群とプラセボ投与群の2群に分けて行った。
 その結果、ケサンラを投与した両集団において、臨床症状の悪化が有意に抑えられた。また、ケサンラの投与を受けた脳内タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者は、認知機能と日常生活機能を総合的に評価する統合AD評価尺度(iADRS)において、プラセボ群と比較して35%の有意な進行抑制がみられた。
 高度のタウ蓄積を有する方を含めた参加者全体においても、ケサンラを投与した参加者のiADRSは22%と、統計学的に有意な臨床的進行抑制を認めた。また、タウ蓄積レベルが軽度~中等度の参加者では、ケサンラの投与群においてプラセボ投与群と比較して、次の臨床病期に進行するリスクが39%低下した。TRAILBLAZER-ALZ 2試験に参加した日本人集団でも、参加者全体と同様の結果が確認された。
 TRAILBLAZER-ALZ 2試験では、ケサンラを投与した試験参加者において、アミロイドβプラークが試験開始時と比較して6ヵ月で平均61%、12ヵ月で平均80%、18ヵ月で平均84%減少した。試験参加者は、アミロイドβプラークがアミロイドPET検査の視覚読影で陰性と判定される最も低いレベルまで除去されたことが確認された場合、ケサンラの投与を完了し、残りの試験期間をプラセボ投与に切り替えた。
 なお、試験開始から12ヵ月後に、ケサンラを投与した試験参加者の66%において、アミロイドPET検査の視覚読影で陰性に相当するアミロイドβプラークの除去が確認された。
 TRAILBLAZER-ALZ 2試験では、アミロイドβを標的とする治療に共通する副作用であるアミロイド関連画像異常(ARIA)のうち、ARIA-Eがケサンラの投与を受けた参加者の24.0%に発現し、6.1%に症候性のARIA-Eが発現した。Infusion reactionは、ケサンラを投与された参加者の8.3%に発現した。

◆高田渉日本イーライリリー研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部 薬事本部長のコメント
 リリーは35年以上にわたり、中枢神経領域における研究開発への投資を継続的に行い、認知症の研究開発における包括的なエコシステムの構築に努めてきた。認知症基本法の制定をはじめ、共生社会の実現に向けて国を挙げた取り組みの中で、今回、投与を完了できる可能性のある薬剤であるケサンラを新たな早期AD治療薬の選択肢として当事者の方々にお届けできることを大変嬉しく思う。リリーは、認知症への理解を深め、スティグマ(偏見)を取り除き、診断と治療へのアクセスを高めるため、今後も尽力していく。

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