エンハーツ 脳転移伴うHER2陽性乳がん患者対象P3b/4試験で好結果 第一三共

 第一三共は17日、 エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン、抗HER2抗体薬物複合体〔ADC〕)について、脳転移を伴うまたは伴わないHER2陽性乳がん患者を対象としたP3b/4試験(DESTINY-Breast12)において好結果を得たと発表した。同試験結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)で公表し、医学雑誌「Nature Medicine」に掲載された。
 同試験は、脳転移の有無を問わず、前治療歴のあるHER2陽性の進行または転移性乳がん患者504名(脳転移を有する患者263名、脳転移の無い患者241名)における同剤の有効性と安全性を評価したグローバルP3b/4相臨床試験である。
 有効性について、脳転移を有する患者集団において、主要評価項目である12ヵ月無増悪生存率は61.6%であった。また、その他の評価項目の一つである中枢神経系における12ヵ月無増悪生存率は58.9%を示した。これらの結果は、安定した脳転移を有する患者集団と活動性の脳転移を有する患者集団において、一貫していた。
 安定した脳転移を有する患者157名における12ヵ月無増悪生存率は62.9%で、中枢神経系における12ヵ月無増悪生存率は57.8%であった。活動性の脳転移を有する患者106名における12ヵ月無増悪生存率は59.6%で、中枢神経系における12ヵ月無増悪生存率は60.1%であった。脳転移の無い患者集団において、主要評価項目である客観的奏効率は62.7%(完全奏効 23名、部分奏効128名)であった。
 安全性については、新たな懸念は認められず、同剤の他の乳がんの試験と同様の傾向であった。対象患者(脳転移を有する患者263名、脳転移の無い患者241名、以下同順)において、グレード3以上の主な有害事象は、好中球減少症(16%、18%)、疲労(9%、10%)等であった。
 間質性肺疾患(ILD)は、それぞれ16.0%と12.9%に発現したと医師により報告された。脳転移を有する患者集団においては、グレード1が26名、グレード2が8名、グレード3が1名、グレード4が1名、グレード5(死亡)が6名であった。脳転移の無い患者集団においては、グレード1が22名、グレード2が6名、グレード5(死亡)が3名であった。
 同試験データを通じて、脳転移を有するHER2陽性乳がん患者の治療におけるエンハーツの使用方法に関する科学的知見を深めることができた。

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