タグリッソ、イミフィンジの単剤療法 肺がん治療化学放射線療法後の選択肢拡大で国内承認申請 アストラゼネカ

 アストラゼネカは、7月31日、タグリッソおよびイミフィンジの単剤療法について、肺がん治療における化学放射線療法後の治療選択肢拡大に向けて、国内で新たな承認申請を実施したと発表した。
 タグリッソは、P3相LAURA試験の結果に基づき、本年6月末にエクソン19欠失型またはエクソン21(L858R)点突然変異が確認された切除不能なステージIIIの上皮成長因子受容体遺伝子変異(EGFRm)を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、根治的化学放射線療法後の治療薬として承認申請している。
 肺がん患者の約80~85%が NSCLC と診断され、日本を含むアジアでは30~40%のNSCLC患者がEGFR遺伝子変異を有している。また、NSCLC患者の6人に1人以上は切除不能なステージIIIと診断されているが、本邦において同適応症に対して承認された分子標的治療薬はない。
 タグリッソに関する同申請の根拠となったLAURA試験の最新データは、2024 年米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されており、タグリッソはプラセボと比較して病勢進行または死亡のリスクを84%低減させ(ハザード比[HR]0.16;95%信頼区間[CI]0.10-0.24; p<0.001)、無増悪生存期間(PFS)中央値は、プラセボ群で 5.6カ月、タグリッソ群では 39.1カ月であった。
 なお、性別、人種、EGFR 遺伝子変異の種類、年齢、喫煙歴、および化学放射線療法 (CRT)の順序など、事前に規定し解析された全サブグループにおいて、一貫した PFS の延長がみられた。
 一方のイミフィンジは、P3相ADRIATIC 試験の結果に基づき、本年7月末に根治的化学放射線療法後に疾患進行が認められない限局型小細胞肺がん(LS-SCLC)に対する単剤療法として承認申請を行った。なお、同適応症に対するイミフィンジ単剤療法は、本年6月に厚労省より希少疾病用医薬品の指定を受けている。
 小細胞肺がん(SCLC)は、肺がんの中でも悪性度が高い病態であり、LS-SCLC患者においては、標準治療であるCRTを行い治療初期に奏効しても、約60%の患者が2年以内に再発すると報告されている。
 LS-SCLCの予後は不良で、診断後の5年生存率はわずか15~30%である。LS-SCLC に対する標準治療はこの数十年変わっておらず、新たな治療選択肢が望まれている。
 イミフィンジに関する同申請の根拠となったADRIATIC試験の最新データは、2024年のASCO において発表されており、イミフィンジは、プラセボに対して死亡リスクを27%低下させたことが示され(全生存期間[OS] HR 0.73;95% CI 0.57~0.93;p=0.0104)、OSの推定中央値はプラセボ群で 33.4カ月、イミフィンジ群は 55.9 カ月であった。
 3年生存率は、プラセボ群の推定 48%に対し、イミフィンジ群は 57%であった。また、イミフィンジ群では、病勢進行または死亡のリスクがプラセボと比較して24%低下し(PFS HR0.76;95%CI 0.61~0.95;p=0.0161)、PFS 中央値は、プラセボ群で 9.2 カ月、イミフィンジ群は16.6カ月であった。
 2年後に病勢進行を認めなかった患者の割合は、プラセボ群の推定 34%に対し、イミフィンジ群では 46%であった。
 アストラゼネカは、1 日も早くこれらの治療選択肢を提供できるように、規制当局と緊密に連携していく。

◆大津智子アストラゼネカ執行役員研究開発本部長のコメント
 肺がんは、当社オンコロジー領域における注力疾患であり、複数の肺がんタイプ、ステージにわたって治療選択肢を提供するべく、開発に取り組んでいる。
 タグリッソおよびイミフィンジに関するこれら2つの承認申請によって、肺がん患者さんの根治的化学放射線療法後の治療選択肢の拡充に貢献できることを期待している。

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