抗がん剤「DSP-5336」 再発・難治性急性白血病P1/2 試験でより一貫した奏効確認 住友ファーマ

 住友ファーマは17日、開発中の抗がん剤「DSP-5336」(メラニンタンパク質結合阻害剤)について、再発または難治性の急性白血病患者を対象としたP1/2試験においてより一貫した奏効や、良好な忍容性が認められたと発表した。これらの結果は、欧州血液学会(EHA)2024 年年次総会で報告された。
 今回のEHAで報告された臨床データは、2023年米国血液学会(ASH)年次総会(2023年12月)で発表されたた予備的なデータに続き、EHA2024ではP1/2試験の非盲検、用量漸増および用量最適化パートの最新データが発表された。
 患者は、同剤を1回40mg から300mgを1日2 回、28 日サイクルで反復経口投与された。
 EHA2024での口頭発表には、57名の結果が含まれている。同剤を1日2回140mg 以上投与された患者、特にNucleophosmin1(NPM1)遺伝子の変異またはKMT2A(MLL)遺伝子の再構成のいずれかが各実施医療機関の検査で認められた21名の患者において、より一貫した奏効が認められた。
 客観的奏効は57%(21 名中12名)に認められ、完全寛解または部分的血液学的回復を伴う完全寛解(CR/CRh)は 24%(21名中5名)に認められた。
 これまでの試験結果において、同剤の忍容性は良好であり、用量制限毒性(DLT)は認められておらず、重大な心毒性の所見、治療関連の投与中止や死亡例も認められていない。
 アゾール系薬剤との重大な薬物相互作用は確認されておらず、反復投与による薬物動態学的蓄積はほとんど認められていない。重要なことに、分化症候群(DS:differentiation syndrome)の予防は必要とされておらず、DS は3名(5%)で報告されたが、いずれもマネジメント可能で集中治療室(ICU)への入院や投与中止には至らなかった。
 白血病は、血液細胞のがんであり造血器官である骨髄中において腫瘍性の白血球(白血病細胞)が異常増殖することで正常造血が阻害されることを特徴としている。
 白血病の一種である急性白血病は、白血病細胞が急速に増殖し、突然症状が現れるため、早急な治療が必要とされている。
 また、急性骨髄性白血病(AML)患者の約30%がNPM1遺伝子の変異を、5~10%がKMT2A(MLL)遺伝子の再構成を有しているといわれている。

◆EHA2024における同剤筆頭発表者のネイバル・デイバー医師(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病研究提携プログラム部長、白血病科教授)のコメント
 本剤のメニン阻害剤による前治療歴のない患者さんにおける奏効は有望であり、再発または難治性の急性白血病患者さんにおいて良好な安全性プロファイルとともに、50%を超える客観的奏効率が示されている。
 メニン阻害剤は、MLL 融合タンパク質および変異NPM1 遺伝子タンパク質の白血病誘発活性を逆転させるため、特定の急性白血病を改善する大きな可能性を有している。有望な臨床活性に加えて、本剤の安全性プロファイルは特に良好であり、重度のDS、DLTおよび投与中止に至る治療関連の有害事象がなく、他のメニン阻害剤と差別化できる可能性がある。

◆ジェイティン・シャー住友ファーマアメリカChief Medical Officer – Oncologyのコメント
 KMT2A(MLL)遺伝子の再構成または NPM1遺伝子の変異を有するAMLに対しては、承認された標的治療法がないため、再発または難治性の急性白血病には、依然として高いアンメットニーズがある。
 メニン阻害の生物学的重要性は明確であり、私たちは急速に進歩しているこの分野において早くから取り組んでおり、これらの初期の結果についてうれしく思っている。
 有効性と忍容性を兼ね備えた新たな治療選択肢の提供を目指したい。AMLの予後の改善と患者さんの治療を進歩させることを期待して、引き続き本剤の試験を進めていく。

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