ドクタートラストは、「2023年度 外部相談窓口サービス相談状況レポート」を公表した。同レポートは、2023年4月~2024年3月に同社の外部相談窓口サービス「アンリ」に会員企業の従業員から寄せられた相談を分析したもの。
同分析により、「メンタルヘルスの相談は引き続き増え続けている一方で、ハラスメントに関する相談は減少した」、「職場の相談で最も多いのは、上司・先輩との関係に関する悩みであった」、「メンタルヘルス不調者への対応、ハラスメントへの介入方法など、人事労務担当者からの相談件数が増加した」などmの結果が判明した。
外部相談窓口サービス「アンリ」は、ドクタートラストが提供する外部窓口サービス・EAPサービスだ。ドクタートラストに所属する医療職が相談員として契約企業の従業員からの相談を受けている。また、各ハラスメント防止法令で定められた「相談窓口」としての要件を満たしている。分析結果の詳細、まとめは、次の通り。
【分析結果の詳細】
1、 相談状況~ハラスメント相談件数が減少~
2024年3月末時点での外部相談窓口サービス[アンリ]の契約社数は309社、会員数は約9万4千人でした。
2023年4月~2024年3月での総相談件数は947件で、最も多かった相談種別は「メンタルヘルス」で、以下「ハラスメント」「健康不調」と続きます。ハラスメントの相談は2022年度に比べて減少していた。
2、相談内容の内訳~最も多いのは「上司・先輩との関係に関する悩み」~
職場にかかわる相談内容で最も多かったのは、2022年度同様に「上司・先輩との関係」であった。他の相談内容とくらべて、件数は倍以上で、「上司・先輩との関係」が悩みの種になりやすいとわかる。
プライベートにかかわる相談内容では「子どもの悩み」が最も多く、次いで「配偶者との関係」となった。
3、相談方法の内訳~レスポンスの早い電話が最も多い~
外部相談窓口サービス「アンリ」では、相談方法に「電話」「メール」「WEB(オンライン面談)」の3通りを用意している。相談方法の内訳としては、「電話」が55.6%、「メール」が37.2%、「WEB」が7.2%で、電話での相談を希望する人が最も多い結果となった。
<各相談方法のメリット>
電話:相談者の状況を詳しく聞け、すぐに返答・アドバイスできる、声の状態も含めた様子を把握できる
メール:匿名性がより高く、好きな時間に相談可能、自身のペースで悩みを書きつづるなかで問題整理ができる
WEB(オンライン面談):表情を直接見ることができるので、言葉だけでは伝わりにくい感情面を共有しやすい
【まとめ】
笹井 裕介氏(ドクタートラスト 看護師/精神保健福祉士/公認心理師)
2022年4月1日より、中小企業にも労働施策総合推進法(パワハラ防止法)で定められたパワーハラスメント防止措置義務の対象範囲が広がったことで、大企業はもとより、従業員が10名未満の少規模な企業も外部相談窓口サービス「アンリ」を利用するようになった。
アンリ相談窓口では、ハラスメントはもちろん、メンタルヘルス、フィジカル、食事、育児などの相談を受け、悩みを抱えた人のサポートを行っている。
こうした中、2023年度は、「従業員への対応」についての相談が非常に増加していることが特徴的であった。「メンタルヘルス不調者がいるが、なかなか受診してくれない」「企業で起きたハラスメントにどう介入すればいいのかわからない」「傍若無人な振る舞いをする社員に困っている」「病気や障害をオープンにした人への配慮に困っている」など、企業によってさまざまな悩みがあるようだ。
大企業であれば、休職者やトラブル対応が必ず発生するので、経験の蓄積や専門の部署も用意があるだろう。だが、中小企業にとっては、そういった資源の確保が難しく、経験したことがない事例、初めて対応する事例になることが多くある。担当者として、どこから手を付ければ良いか、何に手を出して良いのかがわからない状況に陥るケースが珍しくない。
また、個人の機微な情報にどこまで踏み込んで良いのか、どのようなアプローチが適切なのか判断するのが難しく、対応に困ることが多いようだ。昨今、中小企業でもメンタルヘルス不調の問題は一般化してきており、ありふれた問題になりつつあります。外部相談窓口サービス「アンリ」は、従業員にメリットがあるだけではなく、企業の担当者にとってもメリットがある。