IBD患者の「就労における現状と課題」実態調査結果発表 ヤンセンファーマ

 ヤンセンファーマは、IBD(Inflammatory Bowel Disease:炎症性腸疾患)患者の「就労における現状と課題」実態調査を公表した。同調査では、3人に1人が症状の再燃(悪化)により、「急な欠勤」を経験しており、約半数の患者が自分らしく働くためには「周囲(職場、社会全体)の理解が必要」と回答している。
 IBDは、主にクローン病と潰瘍性大腸炎を指し、未だに原因が特定されていない国の指定難病である。小腸や大腸の粘膜に慢性の炎症を引き起こし、長期に渡って再燃と寛解を繰り返す。患者数は世界規模で増加傾向にあり、日本には約29万人(クローン病:約7万人、潰瘍性大腸炎:約 22万人)いるとされている。
 発症年齢のピークは、10 代後半から30代前半で、長期にわたり再燃と寛解を繰り返すため、治療と仕事の両立が課題の1つとなっている。
 同実態調査は、全国のIBD患者の就労実態を把握するため、2023年11月、治療をしながらフルタイムで働いている200人を対象に「IBD患者の就労における現状と課題」に関する調査を実施したもの。
 今回の調査では、就職・転職活動中にIBDを発症していた患者のうち、半数以上が「就職・転職活動に苦労した経験がある」と回答。3人に1人は「体調を崩し、就職・転職が出来なかった」ことが分かった。
 さらに、症状の再燃により、全体の3人に1人が「急な欠勤」を経験したと回答し、中等症以上の患者のうち3人に2人が症状の再燃中に、月1回程度またはそれ以上の頻度で、「仕事の約束や会議などをキャンセルまたは変更」していることも明らかになった。
 また、治療と仕事の両立では、軽症以下の患者の7割以上(74.1%)ができている(「問題なくできている」と「ややできている」の合計)と回答したが、中等症以上の患者では約半数(53.1%)に留まっており、仕事との両立には重症度も影響することが浮き彫りになった。
 職場においては、IBDについて職場の誰かに伝えてはいるものの、直属の上司に伝えている人は 43.5%と全回答者の半数以下に留まった。さらに、「自分らしく働くために必要なこと」として、全回答者の約半数が「周囲(職場・社会)の理解」、約4割が「行政による支援」と回答していた。
 今回の調査結果から、IBD患者が治療と仕事を両立し、社会で“自分らしく”活躍するためには、治療継続による症状のコントロールに加え、治療を継続できる職場環境の整備や、疾患に対する周囲の理解をさらに促進することの必要性が示された。
 ヤンセンでは、IBD患者の「就労における現状と課題」実態調査を2020年より継続して実施している。その調査結果を公表することで、病気に対する社会の理解促進し、患者が疾患を抱えながらも「自分らしくはたらく」ことをもっと当たり前にし、持てる能力を十分に発揮できる環境づくりに尽力していく。
 今回の調査結果のサマリーおよび詳細は、次の通り。

【調査結果のサマリー】

◆半数以上が就職・転職活動に「苦労したり、困ったりした」経験を持つ
 就職・転職活動中に IBD を発症していた127人のうち半数以上(55.9%)が、就職・転職活動中に「苦労した・困ったことがあった」と回答した【図 1】。 苦労した点、困ったことで最も多かったのは「就職・転職先に病気のことを伝えるべきか悩んだ(47.9%)」で、次に「体調を崩してしまい、就職・転職活動が出来なかった(32.4%)」であった【図2】。

◆中等症以上、3人に2人が仕事への影響を経験
 全回答者200人のうち、IBDの症状の再燃(悪化)は半数以上(55.0%)が経験しており、この割合は中等症以上の患者においては8割近く(78.1%)に上る【図 3-a】。
 また、症状の再燃(悪化)により、全体の3人に1人が「急な欠勤」を、5 人に1 人が「仕事のスケジュール変更」を経験していた【図 3-b】。
 さらに、症状の再燃中、「月に1回程度またはそれ以上、仕事の約束や会議などをキャンセルまたは予定変更が必要」だった患者は全体で34.5%であったが、中等症以上の患者では3人に2人(64.0%)に上ることがわかった【図 4-b】。

◆中等症以上では、治療と仕事の両立ができているのは約半数。3人に1人は仕事を諦めたり、仕事をセーブ
 軽症以下の患者では、7 割以上(74.1%)が治療と仕事の両立ができていると回答している【図 5-c】が、中等症以上では約半数(53.1%)に留まった【図 5-b】。
 また、中等症以上の34.4%(11/32)が、「他の人と同じように働くことはできないと諦めて」おり、31.2%(10/32)が「病状の悪化や再燃を気にして自分自身でセーブして仕事をしている」ことも判明した【図 5-b】。

◆8割が病気について職場の誰かに伝えているものの、直属の上司には伝えているのは約4割に留まる
 全回答者の8割がIBDであることを職場の誰かには伝えていたが、直属の上司に伝えていると回答したのは、43.5%であった【図 6】。

◆望まれる疾患に対する「周囲(職場・社会)の理解」
 患者が「自分らしく働く」ために必要と感じていることは「周囲(職場、社会全体)の理解(49.0%)」で最も多く、次いで「行政による支援」(39.0%)であった【図 8】

【IBD 患者の「就労における現状と課題」実態調査結果詳細】

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