糖尿病黄斑虚血治療薬候補「BI764524」 P1/2a国際臨床試験で好結果 ベーリンガーインゲルハイム

 ベーリンガーインゲルハイムは17日、糖尿病黄斑虚血(DMI)の治療薬候補「BI764524」について、同剤を評価する初の試験であるP1/2a相臨床試験(HORNBILL試験)において良好なデータを得たと発表した。同試験でBI764524は、硝子体内への単回または反復投与において主要安全性評価項目を満たすと共に、有効性の初期徴候を示した。現在、糖尿病黄斑虚血を対象に承認されている治療薬はない。
 HORNBILL試験は、2024年 The Association for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO)年次会議で発表された、網膜無灌流、糖尿病網膜症、地図状萎縮、滲出型加齢黄斑変性などに関する他の試験を含むベーリンガーインゲルハイムの網膜疾患領域ポートフォリオに関する演題23本のうちの1 本である。
 糖尿病黄斑虚血は、糖尿病網膜症(DR)によく見られる、不可逆性の病態であり、失明につながる恐れもある。長期間にわたって、中心網膜の光感受性細胞に十分な血液が供給されない場合に発症する可能性がある。
 進行した糖尿病網膜症に対する現在の標準治療(海外)には、抗VEGF硝子体内治療または侵襲性のレーザー治療が含まれる。だが、一部の患者では、これらの治療を行っても病態が進行する場合がある。
 BI764524は、Sema3A経路を阻害するというこれまでにない作用機序で虚血領域に再灌流を起こし、従来以上の治療効果が得られる可能性が期待されている。

◆本試験の治験責任医師および治験調整医師を務めたQuan Dong Nguyen氏(Byers Eye Institute眼科学教授、スタンフォード大学医学部内科学・小児科学教授、MD, MSc, FARVO, FASRS)のコメント
 HORNBILL試験の結果は非常に有望である。早期の介入によって、糖尿病網膜症の患者さんが糖尿病黄斑虚血のような視力を脅かす不可逆性の病態を発症するリスクを低減し、場合によっては予防する道筋が開ける可能性が示された。糖尿病網膜症の患者さんでは、網膜無灌流が視力低下の主な要因となります。だが、このHORNBILL試験までは、網膜無灌流が潜在的な治療対象として検討されたことはなかった。

◆Ulrike Graefe-Modyベーリンガーインゲルハイム網膜疾患領域責任者(Ph.D.)のコメント
 糖尿病網膜症や糖尿病黄斑虚血などの網膜疾患に伴う視力低下は、生活の質に深刻な影響を及ぼす。今回の結果は、不可逆的な障害に至る前に視力低下を予防するために、適切なタイミングで適切な患者さんに適切な治療を提供する個別化医療の開発という我々の目標の達成に向けた重要な一歩となる。BI764524の安全性と有効性をさらに検討する第2b 相試験の開始を心待ちにしている。

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