今後ヘルスケアを含めた全事業の位置づけを検討 三菱ケミカルグループ筑本学代表執行役社長

 三菱ケミカルグループは15日、Webによる2024年3月期決算説明会を開催し、筑本学代表執行役社長が田辺三菱製薬が中軸となるヘルスケア部門について、「ラジカヴァ(ALS治療薬)のパテントクリフも乗り越えて、収益力の高い仕事をしており、感謝している」と高評価した。
 その上で、「ケミカル事業が稼げておらず、ファーマの研究開発ための資金をどのように捻出するのかが頭の痛いところである」との見解を示し、今後については「ヘルスケアも含めた全事業について、ポートフォリオを見ながら今後検討を進めて行きたい。今のところ何も決まっていない」と述べるに留めた。

マンジャロは6月4日から全規格通常出荷再開

 辻村明広三菱ケミカルグループ執行役エグゼクティブバイスプレジデントファーマ所管は、昨年6月12日に発売した持続性GIP/GLP-1受容体作動薬(2型糖尿病治療薬)「マンジャロ」について、「昨年は十分に供給ができていなかったが、本年6月4日から限定出荷を解除し、全ての規格について通常出荷を再開する」と明言した。
 筑本氏は、ヘルスケア部門について、「まず、パイプラインにあるものを上市していくことが1番で、それから次の仕込みについて考えていく。田辺三菱製薬は非常に研究開発力が高いと自負しており、今後もR&Dに投資していきたい」との考えを示した。
 一方で、「国の政策によって薬価が毎年改定されるので、日本国内の比重は下げて行かざるを得ない」との方向性を指摘し、「より薬の価値を認めてもらえる米国のような市場に事業の主体をシフトしていく必要がある」と断言。
 その上で、「ケミカル事業が稼げておらず、ファーマのための資金をどのように捻出するか頭の痛い問題で、この辺を考えて行かざるをえない」と語った。
 同社は、事業成長戦略として、「石化事業の再編」、「スペシャリティマテリアルズ事業の選択と集中」を掲げている。
 筑本氏は、ケミカル事業について、「稼げてないので、急いで成長ビジョンに乗せる必要がある。得意なものを見極めて投資し、得意でないものは整頓する」と強調した。
 ヘルスケア事業は、「しっかりと稼いで貰うのが基本」とした上で、「それぞれの事業のポートフォリオをどうするのか検討していく。今のところ決まった事柄はない」と言い切った。
 三菱ケミカルグループの2023年3月期業績は、売上収益4兆3872億円(対前年比5%減)、コア営業利益2081億円(36%減)、営業利益2618億円(43%増)、税引前利益2405億円(43%増)、当期利益1784億円(32%増)となった。
 その内、ヘルスケア部門は、売上収益4372億円(18%減)、コア営業利益563億円(61%減)。
 2023年度は、エダラボン経口懸濁剤(MT-1186)について、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を適応症として、2023年5月にスイス(製品名RADICAVA Oral Suspension」)で承認を取得した。同剤は、米国・カナダ・日本で既に承認されている。
 2024年3月には、SGLT2阻害剤「カナグル」について、口腔内崩壊錠(OD錠)の剤形追加承認を国内で取得している。
 医薬品事業の売上収益は4374億円(18.3%減)、コア営業利益562億円(61.0%減)、営業利益689億円(18.2%減)。
 国内医療用医薬品の薬価改定の影響や、ノバルティスとの仲裁手続き中に売上収益として認識していなかった多発性硬化症治療薬「ジレニア」ロイヤリティ1259億円を前期に一括計上した反動により減収減益となった。
 国内医療用医薬品の売上収益は、乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」653億円(1.3%減)と堅調。関節リウマチなどの治療剤「シンポニー」433億円(0.5%減)、2型糖尿病治療剤のDPP4阻害剤「テネリア」120億円(22.2%減)、SGLT2阻害剤「カナグル」118億円(1.5%増)、DPP4とSGLT2の合剤「カナリア」108億円(11%増)となった。
 海外医療用医薬品の筋萎縮性側索硬化症治療薬「ラジカヴァ」は792億円(71.6%増)と昨年に引き続き大幅に拡大した。
 2024年度業績予想は、売上収益4490億円(2.7%増)、コア営業利益420億円(25.3%減)、営業利益480億円(30.4%減)。

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