住友ファーマの野村博社長は14日、2023年度決算説明会で会見し、売上収益の柱となる米国の基幹製品オルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)について言及。「24年度の3製品の売上収益目標は、減損テストにおける第三者の見方も入っているので、達成可能と考えている」と強調し、「24年度は、資産売却(200億円)してコア営業利益10億円を達成する」見通しを語った。24年度の最終赤字は160億円を見込んでおり、「前年度の3150億円に比べて大幅に改善する」25年度には、資産売却無しで最終利益の黒字転換を目指す。
住友ファーマの23年度決算は、売上収益3146億円(対前年比43.4%減)、コア営業利益△1330億円(△1493億円)、営業利益△3549億円(△2779億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益△3150億円(△2405億円)となった。
売上収益は、ラツーダ(非定型抗精神病薬)の米国での独占販売期間終了。ラツーダに代わる米国の基幹製品の伸長が予想より遅れて大きく減少した。利益面も、住友ファーマアニマルヘルス社の株式譲渡、住友ファーマフード&ケミカル社の株式譲渡、米国での一部の製品譲渡および優先審査バウチャー売却を行ったものの、最終赤字は3150億円となった。
2024年度業績予想は、売上収益3380億円(7.5%増)、コア営業利益10 億円(1340億円増)、営業利益0(3549億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益△160億円(2990億円増)。
24年度の基幹製品の売上収益予想は、オルゴビクス579億円(37.2%増)、マイフェンブリー179億円(94.6%増)、ジェムテサ550億円(49.4%増)を見込んでいる。
オルゴビクスは、患者や医療関係者などに対してメディケアパートDの薬剤給付制度変更を訴求。主に腫瘍内科医を対象に、オルゴビクスの併用に関する有用な臨床データおよび24年2月に更新されたNCCNガイドラインの認知度を高める。
マイフェンブリーは、経⼝GnRH阻害剤の処方量が多い産婦人科医をカバーできるよう営業チームの最適化を行った。さらに、子宮筋腫および子宮内膜症の両疾患で経口避妊薬無効例に対する最初の治療選択肢となるよう医療関係者に対してより効果的なメッセージで訴求する。Co-payカード 5ドル/3カ月の導入により、「服用開始・継続をサポートしてマイフェンブリーの良さを体感してもらう」(野村氏)
マイフェンブリーのシェアは、子宮筋腫84%、子宮内膜症20%。子宮内膜症は、「市場拡大に加えて、80%のシェアを誇る競合品オリリッサー(アッヴィ)が作ったマーケットを獲得していく」
ジェムテサは、プライマリケア施設担当のセールスレップを増員して、同市場における同剤のシェア拡大に注力。前立腺肥大症を伴う過活動膀胱の適応追加に備え、発売準備を行う。 メディケアパートDにおける契約交渉を通じてGross to Netの改善に取り組む。なお、ジェムテサの売上目標には、ミラベトリック(アステラス製薬)の後発品「ミラベクロン」の影響は加味していない。
野村氏は、住友ファーマアメリカ(SMPA社)の構造改革については、「統合前の23年3月31日時点の2216名が、本年3月31日時点で1200名に減少した。営業活動に支障のないところで人員削減している」と報告した。
研究開発費は、23年度909億円が24年度から500億円に大幅削減される。これに伴い、「各領域でメリハリの効いた投資配分を行うとともに、グローバルで新たなオペレーティングモデルを確立する」
具体的には、がん領域2品目(TP-3654、DSP-5336)の臨床開発に注力し、価値最大化を加速する。パーキンソン病対象のCT1-DAP001/DSP-1083など、再生・細胞医薬プログラムの着実な臨床開発推進する。
精神神経領域では、大塚製薬とのウロタロントの提携枠組みを見直し、初期臨床品目の価値見極めに注力する。人員適正化を行うとともに、日米でグローバルに融合したリーンな研究開発組織へ再編する。
24年度の配当は、コア営業利益10億円を見込むむものの、中期経営計画2027で想定したコア営業利益(400億円)を大きく下回っていることから、無配を予定。復配は、「現状では純資産の絶対値が低く、有利子負債残高も4000億円あるため、今後のキャッシュフロー等を総合的に見て決める」
野村氏は、中期経営計画2027の見直しにも言及し、「当社グループが直面する経営環境を受け、見直しの必要があると考えている」と明言。その上で、「新たな中期経営計画については、可能な限り早期に公表できるよう取り組む」と述べた。