明治と愛媛大学大学院 医学系研究科 疫学・公衆衛生学講座(教授:三宅 吉博氏)との共同研究により、妊娠中の母親の種実類の摂取が出産後の子どもの5歳時における仲間関係問題の発生リスクを低下させる可能性があることが判明した。同研究成果は、国際科学雑誌「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」で発表された。
明治は、愛媛大学の三宅吉博教授が実施した出生前コホート研究「九州・沖縄母子保健研究」に参画し、大規模なデータセットを用いた疫学的解析を行っている。
従来から、妊娠中の母親の食事をはじめとする環境要因が子どもの精神行動発達に重要な役割を果たしていると言われていたが、今回の研究では、妊娠中の母親の種実類の摂取が子どもの仲間関係問題を予防できる可能性があることを報告した。
同社は、母子栄養に関する多角的研究の一つである「九州・沖縄母子保健研究」に引き続き参画し、妊娠中の母親の栄養摂取と子どもの精神行動発達の関連性を明らかにすることで、母親と子どもの栄養に関する基盤情報を蓄積する。
さらに、それらの基盤情報をもとに、周産期の女性に適した栄養食品の開発と栄養情報の提供を行っていく。
今回の共同研究は、「九州・沖縄母子保健研究」の5歳時における追跡調査に参加した1199組の母子から得た情報を解析対象としたもの。
①妊婦の栄養情報は、妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて調査した。また、子どもの精神行動発達における情緒問題、行為問題、多動問題、仲間関係問題、および低い向社会的行動については、子どもの強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire:SDQ)」の質問項目への回答をスコア化して評価した。
仲間関係問題は他の子どもとの関係性を評価することで明らかになるもので、具体的には次の事例を指標としている。
・一人でいるのが好きで、一人で遊ぶことが多い
・仲の良い友だちが少なくとも一人はいる
・他の子どもたちから、だいたいは好かれているようだ
・他の子から、いじめの対象にされたり、からかわれたりする
・他の子どもたちより、大人といる方がうまくいくようだ」
②妊娠中に種実類を摂取しなかった群を基準とした場合の種実類を摂取した群における各精神行動発達問題の生じるリスクを比較した。その際、非栄養要因である母親の年齢、妊娠週、居住地、子数、両親の教育歴、家計の年収、妊娠中の母親のうつ症状、妊娠中の母親のアルコール摂取、妊娠中の母親の喫煙、子どもの出生体重、性別、母乳摂取期間及び生後1年間の受動喫煙の影響を補正した。
さらに、栄養要因として、種実類と仲間関係問題との関連において、過去に仲間関係問題のリスクを低下させることが明らかになっている総大豆製品摂取の影響を補正した。
その結果、妊娠中に種実類を摂取しなかった群と比べて摂取した群の補正オッズ比(OR)は0.64(95%信頼区間(CI):0.42−0.97)と有意な関連を認めた(図)。
妊娠中の種実類の摂取は、5歳の子どもの仲間関係問題のリスクを低下させることが示された。今回の結果を確認するためには今後のさらなる研究が必要となる。