日本製薬工業協会は25日、梅田 蔦屋書店(大阪市北区)でハービー・山口氏撮影による医療領域啓発イベント写真展第2弾「病いと生きる。希望と生きる。写真展~まだ見ぬ答えを、生み出す未来へ~」の大阪開催オープニング発表会を実施した。
同写真展は、医薬や医療領域における社会課題を広く一般市民に知って貰うことを目的としたもの。日本臨床腫瘍学会、日本癌学会、日本癌治療学会、CancerXの4団体の協力を得て、3月25日~31日まで、梅田蔦屋書店 ショールームで開催される。
今回は、2023年12月の東京・原宿での開催に続く第2弾。4団体協力の下、患者やその家族、がんサバイバーの人や支援者、医療関係者など、さまざまな立場で病気と向き合いながら希望を失わずに挑戦している人々の姿や想いを、一つひとつの写真メッセージからともに考える内容になっている。
オープニングセレモニーでは、写真家のハービー・山口氏、上野裕明日本製薬工業協会会長、医師の立場から日本癌治療学会に所属する高橋剛氏(大阪大学大学院医学研究科外科学講座消化器外科学准教)、患者の立場からCancerXの谷島雄一郎氏(ダカラコソクリエイト発起人・世話人、カラクリLabオーナー)が登壇し、トークを展開。
‟お互いの幸せを願い合いながら撮影する”というハービー氏の強い信念の下に撮影された一枚一枚の写真を通じて、疾患への理解、患者や医療従事者の想いを共感しながら、社会全体で病に関わっていく重要性が確認された。
始めのあいさつで上野会長は、「これまで医薬品は数々の疾患治療に貢献して来たが、まだまだ治療薬が無い疾患が多くある。これからは、患者数の少ない稀少疾患に対する医薬品の提供にも挑まねばならない」と明言。
その上で、「患者さんの想い、医療従事者の想いを良く理解してこそ良い医薬品ができる。ハービーさんの写真を通じて、どのようにして病とともに生きながら希望を出し続けるかを皆さんとともに共感できれば幸いである」と訴えかけた。
ハービー山口氏は、自らの名前の由来について、「中学2年の時に友達から貰った。私は、生後2か月半で腰椎カリウスに罹患し、10数年コルセットをしていた。医師からコルセットを外しても良いと言われた時、本名は病気とともに捨てて、拾いものの命を生きてみようと思いこの名前にした」と説明した。
さらに、「人間は、年とともに老いるのではなく、希望を捨てた時に老いる。希望を最後まで失わずに人の役に立つのが幸せな人生だと思う」と強調し、「私は、何時でも被写体の明日の幸せを祈ってシャッターを切ってきた。それが良いバイブレーションを被写体に与え、好循環となり良い表情を得る」と写真家としての信念を明かした。
トークセッションでは、高橋氏が「私が専門としているジストは、10万人に1人か2人の稀少疾患で、薬は不十分である。また、欧米で認められている薬が日本では使えないドラッグラグの問題もある」と説明し、「今回、稀少疾患に目を向けて頂いたのは非常にあり難い」と語った。
谷島氏は、「私は、そのジストの患者で12年間治療を受けている。昨今、医療の進歩によって日常生活と治療の両立ができるようになり、患者の課題は日常生活に発生するようになった」と指摘。
その上で、「この課題を解決するには、色々なデザインを加えて社会の人々に関わって貰える形にすることが重要である」との考えを示した。
さらに、今回のハービー氏の写真にも言及し「安易に患者さんの笑顔を撮って感動のコンテンツとして消費する作品ではない」と断言。その理由について、「ハービーさんの写真には、お互いの幸せを願う心が込められているからである」と述べ、「写真展が、誰もが疾患を知って関わっていく切っ掛けになれば嬉しい」と訴求した。
上野氏は、「治療薬で疾患を治すのは我々の一番の目的であるが、その先の患者さんの人生にいかに貢献できるかを考える必要がある。患者さんの想いをもっともっと知って、製薬会社の使命を果たしていかねばならない」とコメントした。
ハービー氏は、「患者さんとは、自分のカリウスの経験によって共感し、無理なく接することができた。お医師さんは、人の役に立っている凛々しさ、優しさ、大きな心が、写真に写ればと思って撮影した」と振り返った。