ギリアド・サイエンシズは30日、乳がん治療薬として開発を進めている抗体薬物複合体sacituzumab govitecanについて、HR陰性HER2陰性乳がんを適応症とする製造販売承認を日本国内で申請したと発表した。
対象は、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(HR-/HER2-)。
sacituzumab govitecanは、90%以上の乳がんを含む複数のがん種で高発現する細胞表面抗原であるTrop-2たんぱくを標的とする抗体薬物複合体(ADC)。
Trop-2が発現したがん細胞に取り込まれると、トポイソメラーゼI阻害剤であるSN-38を直接届けるとともに、バイスタンダー効果により周辺のがん細胞のDNAにも作用し、がん細胞を死滅させる。
今回の承認申請は、2つ以上の化学療法レジメンによる前治療後に再発した切除不能な局所進行または転移・再発のHR-/HER2-乳がん患者さんを対象に海外で実施したP3試験(ASCENT)および国内P2試験(ASCENT J-02)の結果に基づくもの。
HR-/HER2-(IHCスコア 0、IHCスコア 1+またはIHC スコア 2+/ISH検査陰性)(通称トリプルネガティブ)乳がんは、最も悪性度の高いタイプの乳がんで、乳がん全体の約10%を占める。
HR-/HER2-乳がんの細胞は、エストロゲンとプロゲステロンの受容体の発現がなく、HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)の発現も限定的もしくは全くない。HR-/HER2-乳がんはその性質上、他の乳がんに比べて有効な治療法が極めて限られており、再発や転移の可能性が高いといわれている。
他の乳がんにおける転移再発までの平均期間が5年であるのに対し、HR-/HER2-乳がんは約2.6年である。5年生存率は、一般的な再発乳がんの女性においては28%、HR-/HER2-再発乳がんにおいては12%となっている。