来年度の診療報酬マイナス改定提言受け「国民医療を守るための集会」開催 大阪府地域医療推進協議会

 大阪府地域医療推進協議会は22日、大阪府医師会館で「国民医療を守るための集会」を開催し、「国民生活に無くてはならない医療・介護・福祉を守るには、適切な財源確保が不可欠となる」主旨の決議を採択した。
 同集会は、来年度の診療報酬改定を巡り、財務省が診療所に対して診療報酬5.5%のマイナス改定を提言したことを受けて急遽開催されたもの。採択された決議は、与野党国会議員を始めとする関係方面に提出される。
 大阪府地域医療推進協議会は、大阪府医師会、大阪府歯科医師会、大阪府薬剤師会、大阪府看護協会、大阪介護福祉会など大阪府の医療・介護・福祉に加えて、市民団体を含めた34団体で構成し、医療の確保と福祉の充実に取り組んでいる。

高井氏

 集会では、高井康之大阪府地域医療推進協議会会長(大阪府医師会会長)が、「物価高騰や賃金面で人材確保が困難な状況が続けば、医療機関、保険薬局、介護施設は運営の維持ができず、地域医療、介護提供体制が崩壊する可能性がある。その危機感を持って本日の集会を開いた」と開催主旨を説明した。
 続いて中尾正俊大阪府医師会副会長が、医療を取り巻く現況について、「長らく続く物価高騰に対応するため、政府は持続的な賃上げを呼びかけているが、公定価格で運営する医科・歯科医療機関、保険薬局、介護施設等は価格転嫁できない」と明言。
 その上で、「医療・介護分野従事者約900万人の賃金を上げることで、全国津々浦々まで物価高騰対応や賃金上昇の波を行き渡らせ、我が国全体の賃金上昇と地方の成長実現が見込める」との考えを強調し、「唯一の原資である診療報酬への適切な対応」を訴えかけた。
 さらに、「医療・介護分野の賃金上昇は公定価格の下で半分程度の水準(1%)に留まっている」と指摘し、「特に介護分野では大きな離職超過が生じており、他産業への人材流出がみられる」との危機感を示した。 深田拓司大阪府歯科医師会会長は、来年度の診療報酬マイナス改定提言について「医科・歯科医療機関、薬局、介護施設に余力を全て吐き出しなさいというものだ」と語気を強め、「医療関係者がおらず、実情を踏まえて反論できない場で一方的な議論がなされている。財務省、財政制度等審議会による社会的ハラスメントとしか受け取れない」と憤った。

乾氏


 その後、乾英夫大阪府薬剤師会会長が、「国民生活に無くてはならない医療・介護・福祉を守るには、適切な財源確保が不可欠となる」を主旨とする決議案を読み上げ、全員一致で採択された。
 弘川摩子大阪府看護協会会長は、「この4年間、コロナ禍の最前線で戦ってきた。コロナ禍以前から地域包括システムの推進、重症化の予防活動等を通じて府民の命を守ってきた。地域医療推進協議会とともに我々が進むべき道を歩んでいきたい」と抱負を述べた。

記者懇談会

 集会後に開かれた記者懇談会では、高井大阪府医会長が、財務省の診療所に対する診療報酬5.5%マイナス改定提言について、「大阪府などの都市部では、高齢者が増加していく。在宅医療を支える上で、診療所の役割は大きい」と改めて断言。
 その上で、「今回の診療所をターゲットとした提言は、非常に遺憾である。コロナで儲けたのだからその分を吐き出せばよいというやり方ではモチベーションも下がる」と訴求した。
 乾大阪府薬会長は、「診療報酬は公定価格なので物価上昇、賃金上昇に転嫁できない。加えて、6年連続の薬価引き下げがあり、急激に資産が目減りし、ここ3年の医薬品供給不足で、現場の薬剤師は医薬品の備蓄に疲弊している」と保険薬局現状を説明し、「適切な財源確保が行われて、在宅医療に貢献できるようにして頂きたい」と訴えかけた。
 乾氏は、デジタル技術を活用して医療業務の効率化を図る‟医療ICT”にも言及し、「後発品を中心とした医薬品データ構築にも利用できる。完成すれば、必要な医薬品を共有して融通でき、災害時にも使用できる」と述べた。

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