異なる戦略で形成した大脳オルガノイド血管系の特徴解明 早稲田大学

移植医療や再生医療、ヒトに対する薬剤スクリーニングなどへの応用に期待

 早稲田大学総合研究機構の片岡孝介主任研究員、理工学術院の朝日透教授らの研究グループは、異なる戦略で形成した大脳オルガノイド血管系の特徴を明らかにした。
 公共データベース上のシングルセルRNAシークエンシングデータを再解析し、ミニ人工脳である大脳オルガノイドにおいて血管構造を導入するための複数の戦略が、大脳オルガノイドを構成する神経系等に対して異なる影響を与えることを明らかにしたもの。
 さらに、血管構造を導入した大脳オルガノイドにおける血管系と神経系の間の相互作用が、血管が正しく脳の血管として機能するために重要である可能性を示した。
 これらの研究成果は、ドイツ・イギリスに本拠を置く学術出版社であるSpringer Nature社発行による『BMC Biology』誌に掲載された。今後、移植医療や再生医療、ヒトに対する薬剤スクリーニングなど幅広い分野への応用が期待される。
 ヒト特有の脳の発生過程や疾患の解明、また治療薬開発の鍵としても注目を集める大脳オルガノイドは、それ自身が血管系を有さないために、酸素・栄養の供給や、毒性代謝物の排出が自発的にできず、そのためサイズも制限されるなどの課題に直面し、発展的な利用の足枷となっていた。
 既に大脳オルガノイドに機能的な血管構造を導入する戦略が複数提案されてきたが、それらを統合的に比較した研究がこれまで存在しなかったため、それぞれの血管形成戦略の特徴や課題などを正確に把握できなかった。
 今回の研究において、公開データセットで入手可能なシングルセルRNAシークエンシングデータを用いた解析を行うことにより、異なる戦略のもとで大脳オルガノイドに導入した血管構造を構成する細胞の特徴を明らかにすることができた。
 将来的に、より実際のヒトの脳に近い血管化大脳オルガノイドを作製する際の指標としての活用が期待できる。

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