武田薬品は10日、ADZYNMA(遺伝子組換え ADAMTS13-krhn)について、先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)治療における初めてかつ唯一の遺伝子組換えADAMTS13酵素補充療法として米国FDAが承認したと発表した。
対象は、cTTPの成人および小児患者の予防的治療薬ならびにオンデマンド治療。ADZYNMAは、欠乏したADAMTS13 酵素を補充することでcTTP患者のアンメットメディカルニーズに対応するための初めてかつ唯一のFDA承認の遺伝子組換えADAMTS13(rADAMTS13)タンパク質だ。
cTTPは、ADAMTS13酵素の欠乏によって生じる超希少かつ慢性の血液凝固障害である。急性症状や消耗性の慢性症状または急性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)症状を伴い、これには血小板減少症、微小血管症性溶血性貧血、頭痛、腹痛が含まれる場合がある。未治療のまま経過すればTTPの死亡率は90%を超える。
FDAによるADZYNMAの承認は、cTTPを対象とした初の無作為比較非盲検クロスオーバーP3試験の有効性、薬物動態、安全性および忍容性データの解析、ならびに継続試験のデータによって提供された包括的エビデンスによって支持されている。
同P3試験では、登録時の治療法に基づき、1~6 か月目(期間 1)に40 IU/kg のADZYNMA IVの投与または血漿療法を隔週または毎週実施し、7~12か月目(期間 2)に代替治療に移行し、13~18 か月目(期間 3)に全例に ADZYNMA を投与した。
ADZYNMAの予防的治療(n=37)中に急性 TTP 事象を発現した患者はいなかったが、血漿療法を受けた患者(n=38)では1件の急性TTP事象が認められた。
同P3試験の対照比較期間1および2においてADZYNMA群で亜急性TTP 事象は報告されなかったが、血漿療法を受けた患者のうち4名に5件の亜急性TTP事象が認められた。継続期間(期間 3)においては、ADZYNMA予防的治療群の2名の患者で2件の亜急性事象が認められた。
血小板減少症事象の年平均換算発現率は、血漿療法群では4.44(6.312)であった(37 名のうち 9 名の患者に発現)のに対し、ADZYNMA投与群では2.0(4.706)であった(38 名のうち19名の患者さんに発現)。
この比較の臨床的な意義は確認できていないが、血小板減少症はTTPの症状であるため、重要な疾患活動性バイオマーカーである。
ADZYNMAは、遺伝子組換え ADAMTS13タンパク質で、薬物動態学的評価において、ADZYNMA 40IU/kg 点滴静注群(n=23)では、血漿療法と比較して、単回点滴静注によりADAMTS13活性が4~5倍に上昇した。
ADZYNMAは、血漿療法群と比較して良好な安全性プロファイルを示した。最も頻度の高かった副作用(発現率 5%超)は、頭痛、下痢、片頭痛、腹痛、悪心、上気道感染、浮動性めまい、嘔吐であった。ADZYNMA投与群に中和抗体を発現した患者さんはいなかった。
なお、同承認による武田薬品の2024年3月期(2023 年度)通期の連結業績予想に変更はない。
◆ジュリー・キム武田薬品U.Sビジネスユニット プレジデント・U.S.カントリーヘッドのコメント
cTTP 患者さんは、生命を脅かす深刻な健康問題に直面しており、今日までこの疾患に特化して承認された治療法は存在しなかった。当社は、治療の選択肢が限られている、または治療の選択肢がない患者さんを救うために尽力しており、希少疾患に対する治療薬の開発は、重要な挑戦であり、当社が血液疾患領域のリーダーとして70年以上にわたり担っていることである。
本日、cTTP患者さんにとって初めてのFDA承認の治療選択肢として ADZYNMAをお届けすることで、希少疾患の患者さんとその家族や関係者、そして医療者をさらに支援できるようになったことを大変光栄に思う。
◆ADZYNMA 臨床試験治験責任医師のSpero R. Cataland氏(オハイオ州立大学ウェクスナーメディカルセンター内科教授、U.S. Thrombotic Microangiopathy Alliance共同ディレクター、M.D.)のコメント
この数十年間に、ADAMTS13の欠乏とcTTP との関連性をより深く理解する上での大きな進歩があり、最終的に、この希少疾患とともに生きる患者さんのための、FDA が承認した治療選択肢を手にするこの瞬間を迎えた。
本日の承認は、cTTP患者さんのコミュニティに新たな可能性をもたらす重要な成果である。