住友ファーマの野村博社長は10月31日、2023年度第2四半期決算説明会で会見し、米国で特許切れした大型主力品ラツーダ(非定型抗精神病薬)に代わる戦略品のオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の進捗状況を報告。「上半期売上高計画達成率は、オルゴビクス89%、マイフェンブリー49%、ジェムテサ72%であったが、現在、この3製品は色々な手立てを使って数量面での改善を図っている」と説明した。
その上で、「上半期の業績では色々な下振れリスクがあるものの、 現段階では通期業績予想は見直しを行わず、米国戦略3品目の戦略実行によって達成させる」考えを強調した。通期業績予想は、売上収益3620億円、コア営業利益△620億円、営業利益△780億円。
野村氏は、2024年度業績にも言及し、「コア営業利益400億円を掲げており、予定通り黒字化を目指したい」と語った。
2023年度第2四半期の業績は、売上収益1526億4200万円(前年同期比52.2%減)、コア営業利益△658億4900万円(前年同期は248億4100万円)、 営業利益△864億9800万円(前年同期は△289億1500万円)、四半期利益△677億3600万円(△152億4300万円)。米国での「ラツーダ」特許切れの影響、北米グループ会社再編に伴う事業構造改善費用の計上などで損失が拡大した。
ラツーダに代わる戦略3製品では、オルゴビクスが2023年度上半期売上高194億円を計上。計画達成率は売上高で89%、数量で85%であった。価格は、前四半期のメディケアパートDにおけるCoverage Gapの負担が計画より少なかったためポジティブとなり、数量は、シェア獲得の遅れにより計画が未達となった。
これまで大学病院での販売が十分でなかったため、病院の購買担当者にアクセスして、オルゴビクスの使用促進を訴求している。さらに、院内調剤の泌尿器科クリニック(ADT市場の約19%)に対して、6月からAdvanced Analyticsチームによる分析を活用し、処方医師への的確な内容の訴求およびセールスレップの医師訪問時期改善を図っている。セールスレップ数は、住友ファーマアメリカ100人、ファイザー100人。
また、2024年1⽉より高額医療費の自己負担撤廃・低所得者としての認定要件の緩和などのメディケアパートDの薬剤給付制度が変更され、オルゴビクスが処方されやすくなる。価格面では、Gross to netは、現在のトレンドが今後も継続される見込みにある。
マイフェンブリーの売上高は42億円。計画達成率は売上高で49%、数量で64%。野村氏は、販売価格が予算よりも下回った要因として、「メディケイドでの処方割合の増加」や「Co-payカード使用」を挙げた。子宮筋腫におけるGnRH阻害剤投与でのマイフェンブリーのシェアは85%だが、「まだ、同疾患でのGnRH阻害剤の投与は少なく、伸びも早くない。子宮内膜症に関しては、上市遅れもあり、シェアも小さい」(野村氏)。
そこで、子宮筋腫については、GnRH阻害剤を経⼝避妊薬無効例に対する最初の治療選択肢としての地位を確立することで、マイフェンブリーのより早い段階での使用を推進している。
子宮内膜症は、「痛みを効果的に治療する治療剤」としてマイフェンブリーを訴求し、GnRH阻害剤の選択肢としての普及を推進していく。
また、ファイザー社とともに、Advanced Analyticsチームを交え、セールスレップの人員配置・ターゲティングの継続的な適正化を推進する。セールスレップは、住友ファーマアメリカ100人、ファイザー100人。加えて、Advanced Analyticsチームを活用し、DTCの効果と効率を改善するとともに、ファイザー社と新たなDTCを立ち上げる(予定)。価格面では、Co-payカードの使用状況監視、適正使用強化を図る。
ジェムテサの売上高は158億円。計画達成率は売上高で72%、数量で98%。野村氏は、「価格が弱含みとなったのは、メディケアパートDでの数量割合の増加およびジェムテサ未カバーの保険加入者での数量割合の減少が要因している」と分析する。2023年度の戦略として、過活動膀胱を対象とした処方の約45%を占めるプライマリケア・長期療養施設での認知度(現在30%程度)の向上・処方取り込みに注力する。
さらに、Webやクリニック待合室で実施中のデジタル広告に加え、11月のBladder Health Awareness Monthにサテライトメディアツアーを実施し認知度を高める方針だ。ジェムテサのセールスレップ数は、200人(住友ファーマアメリカ)。
野村氏は、P3試験でプラセボとの有意差が示せなかった統合失調治療薬「ユーロタロント」にも言及し、「追加試験が必要になる」と明言。その上で、「今後の開発については、大塚製薬と検討し、今年度中に合意する」見通しを示した。
国内で限定出荷となっているツイミーグ(2型糖尿病治療薬)については、「メーカーの協力を得て原薬を確保し、製剤、パッキングも含めて鈴鹿工場で3交代で在庫を積み上げている」と説明し、「本年12月末には、限定出荷を解除できる」と語った。