塩野義製薬の手代木功会長兼社長CEOは31日、2023年度中間決算説明会で会見し、「国内でのゾコーバ(新型コロナ経口治療薬)、ゾフルーザ(インフルエンザ治療薬)、海外でのセフィデロコル(新規シデロフォアセファロスポリン系抗菌薬)の堅調な推移」を強調。
その上で、「新型コロナ関連製品とインフルエンザファミリーを通期で合計886億円売り切ることで、通期予想の売上収益4500億円、営業利益1500億円を達成し、創業来の過去最高業績を維持したい」と抱負を述べた。
塩野義製薬の2023年度第2四半期決算は、売上収益2305億4200万円(前年同期比52.9%増)、営業利益981億600万円(同247.6%増)、税引前利益1156億0300万円(同70.1%増)、四半期利益901億9800万円(同57.1%増)。
ゾコーバ、ゾフルーザ、セフィデロコルのトップラインの堅調な伸長に加えて、ADHD治療薬のライセンス移管に伴う武田薬品からの一時金受領(250億円)などが寄与し、売上収益、すべての利益項目で上半期での過去最高を記録した。
2023年度通期業績予想について手代木氏は、「国内での予想を上回るゾコーバの市場浸透」、「今冬における呼吸器感染症の再流行予測」、「ヴィーブ社によるHIVフランチャイズの好調な販売推移」、「セフィデロコルの販売拡大の継続」などのプラス材料を列挙。
さらに、「中国・韓国でのゾコーバの売り上げが来年1~3月に入って来る可能性もあるが織り込んおらず、上方修正を予測する声もある」とした上で、「現時点では、トップラインの成長の堅調を考慮して、売上収益および各種利益項目は当初予想を据え置いた」と説明した。
ゾコーバの開発プランについては、重症化リスクを持つ外来新型コロナ患者における臨床症状改善効果を検証するSCORPIO-HR試験の目標登録症例数2000例が、年内に症例登録完了見込みにある。
SCORPIO-HR試験では、新型コロナ罹患による「集中力の低下」、「物忘れ」などの後遺症(Long COVID)に対するの効果検証も実施する。現在、FDAと評価項目の定義に合意しており、エンドポイントを協議している。
Long COVIDに対する効果では、アジア圏における治療1年後時点で、特に、集中力、思考力の低下、物忘れの状態では、それぞれ68%、72%のリスクを有意に低下する結果が報告されており、「ゾコーバによる早期治療の必要性」が示唆された。
SCORPIO-PEP試験は、ゾコーバによる新型コロナ感染予防を検証するもので、2200例を目標とする症例登録が順調に進捗している。
一方、7月31日の厚労省の専門部会で継続審議となった新型コロナ組み換えタンパクワクチンは、ベトナムで完了している発症予防P3試験データを新たに提出し、COVID19基本株に関する承認審査が改めて行われる。
並行してこの冬にXBB1.5株ワクチンの臨床試験を実施し、次の秋接種シーズンには間に合うように変異株ワクチン開発も推進している。
手代木氏は、新型コロナワクチン以外のワクチンの開発について「現在、3000万人から4000万人分の不活化インフルエンザワクチンが4社から提供されている」と指摘。
その上で、「当社は、組み換え蛋白を中心としたフランチャイズの中で、ユニバーサルワクチン、経鼻ワクチンなど少し世代を更新する形で、インフルエンザ、デング熱、それ以外のウイルスについて開発を検討中である」と述べ、「大規模な遺伝子組み換えタンパクワクチン工場のUNIJENも安定的な稼働期に入ってきたので、こうしたワクチンの製造にも活用する」考えを示した。