8月18日・19日に大阪で開催された第9回日本筋学会学術集会・第10回筋ジストロフィー医療研究会の合同学術集会で、肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)患者を対象としたパイロット臨床試験におけるNeu REFIXベータグルカンの疾患修飾効果が報告された。
Neu REFIXは、黒酵母菌が菌体外多糖として産生するベータグルカンで、原料はアウレオバシジウム培養液として厚生労働省の既存添加物名簿に収載されている。GRAS(USFDA)、EFSA(EU)の認証は受けていない。
研究結果は、医学的アドバイスとして解釈されるものではなく、発表および研究出版物は学術及び教育目的のためのものである。
研究責任者のRaghavan医師は、9月10日の世界デュシェンヌ啓発デー (World Duchenne Awareness Day) のウェビナーで、インド・マドゥライのJAICARE病院で60日間実施されたこの研究について発表。「筋機能のマーカーが改善したことは、病気の進行が緩やかになる良い兆候だと考えられる」と述べた。
同ウェビナーでは、市山浩二博士が大阪で発表した、MDXマウスモデルでの前臨床試験結果についても説明が行われ、「Neu REFIXベータグルカンの経口摂取による筋再生促進が確認された」ことが報告された。
この前臨床試験における評価は、高知大学総合研究センターの坂本修士教授の研究チームと共同で行われたもの。
筋ジストロフィーは、必要な成分が欠乏し、筋肉が徐々に弱くなる希少疾患です。様々な型がある中で、デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD) は最も一般的な型であり、通常6歳までに症状が現れる。肢帯型筋ジストロフィー (LGMD) はDMDより発症年齢が遅いと考えられている。
研究チームは、まず MDXマウスモデルでの前臨床試験、及び45日間と6ヶ月間の2つの臨床試験で、DMDにおけるNeu REFIXベータグルカンの安全性と有効性を証明し、その後LGMDの研究に着手した。
その結果、標準治療薬と併用してNeu REFIXの経口摂取を行った場合、筋機能と歩行の評価が改善されることがわかった。研究者らは、「動物実験で証明された再生筋の増加が、臨床における筋力向上の理由を説明できる」とコメントしている。
幼い男児のDMD病態を模したMDXマウスモデルを用いた前臨床試験では、臨床で使用されている疾患修飾薬を使用せず、Neu REFIXベータグルカンの経口摂取のみで筋肉の再生促進が確認された。筋ジストロフィーにおける骨格筋の変性と再生の繰り返しは非常に複雑であり、炎症カスケードの性質とメカニズムについては詳細な評価が必要だ。
この研究の共著者である山本直樹医師(東京医科歯科大学名誉教授)は、「Neu REFIXベータグルカンの有効性のメカニズムを明らかにするために、我々は動物モデルでより多くのバイオマーカーを評価している。将来、幅広い免疫調節物質として自己免疫疾患への応用の道が開けることを期待している」と述べている。
また、パネリストとしてウェビナーに参加したStephen Abraham Sureshkumar医師(元Madras Medical College & Institute of Child Health小児神経学教授)とJohn Solomon 医師(The Tamil Nadu Dr. M.G.R. Medical University & Balaji Medical college名誉教授、小児科医)は、「Neu REFIXベータグルカンによってDMD患者の心筋線維症が改善されるかどうかを評価するべきである」とのコメントを出している。
今回の共同研究プロジェクトを主導したジーエヌコーポレーション(山梨県甲府市)は、Neu REFIXの有効性をより長期間にわたり検証し、筋ジストロフィー患者のQOLを改善する有効な方法を見つけるために、さらなる研究の実施を提案している。
研究チームは、多発性硬化症などの神経疾患におけるアンメットニーズを念頭に、ベータグルカンによる腸内細菌の調整作用などに探求を広げている。