リムパーザとアビラテロンとの併用療法 国内で前立腺がん治療薬の承認取得 アストラゼネカとMSD

 アストラゼネカとMSDは24日、リムパーザとアビラテロンとの併用療法について、「BRCA 遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌」を適応症として23日に厚労省から承認されたと発表した。リムパーザは、アストラゼネカと MSD により共同で開発、商業化が行われている。
 前立腺がんは、日本では男性が罹患するがんにおいて最も多く、がんによる死亡原因として6番目に多いがんで、2022 年には 9万6400人が新たに診断され、1万3300人が死亡したと推計されている。男性ホルモンの作用を阻害するアンドロゲン除去療法を行ったにもかかわらず前立腺がんが増殖し、他の部位に転移した場合、転移性去 勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)と診断される。
 mCRPC に対する治療法は増えているものの、予後は依然として不良であり、初回治療後にがんが進行した患者さんに対する治療選択肢は限られている。これは、日本における mCRPCに対して効果的な新しい治療選択肢が緊急に必要であることを浮き彫りにしている。
 今回の承認は、BRCA 遺伝子変異(BRCAm)を有する mCRPC 患者において、リムパーザとアビラテロンの併用療法が、アビラテロン単独療法と比較して、画像診断による無増悪生存期間(rPFS)(ハザード比[HR]0.23、95%信頼区間[CI]0.12-0.43)および全生存期間(OS)(HR 0.39、95% CI 0.16-0.86)のいずれにおいても臨床的に意義のある延長を示したP3相 PROpel試験のサブグループ解析に基づくもの。
 アビラテロン単独で治療された患者は、rPFS 中央値および OS 中央値が 8.4 ヵ月および 23.6 ヵ月であったのに対し、リムパーザとアビラテロンの併用療法で治療された患者さんでは増悪や死亡が少なく、それぞれ中央値の検出基準に未到達であった。
PROpel 試験におけるリムパーザとアビラテロン併用療法の安全性および忍容性は、過去の臨床試験や個々の医薬品の既知のプロファイルと一貫していた。
 リムパーザは PROpel 試験の結果に基づき、EU および他の数カ国において、アビラテロンおよびprednisoneまたはプレドニゾロンの併用療法で、化学療法が臨床的に適応とならないmCRPC患者に対する治療として承認されている。
 さらに、米国では、この併用療法はBRCAm または変異陽性が疑われるmCRPC患者の治療としても承認されている。
 なお、日本においては EU、中国と同様にリムパーザはP3相 PROfound 試験の結果に基づいて、新規ホルモン製剤治療を含む前治療後に進行した BRCAm の mCRPC 患者さんに対する治療としても承認されている。

◆大家基嗣慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室教授のコメント
 「PROpel 試験のデータから、リムパーザとアビラテロンの併用によって、BRCAm の mCRPC患者さんにおける臨床的に意義のある転帰の改善が示された。今回の承認により、日本の患者さんは、新たにBRCAmのmCRPC に対する標準治療として期待されるこの新しい併用療法のベネフィットを受けられるようになる。

◆大津智子アストラゼネカ執行役員研究開発本部長のコメント
 リムパーザとアビラテロンの併用療法では BRCAmのmCRPC患者さんにおけるrPFSとOSの延長が示され、この併用療法に対する承認は、日本の患者さんにとって大きな前進であると感じている。アストラゼネカでは、前立腺がん患者さんのより良い治療生活の実現に努めており、今回の承認取得によって日本の BRCAm 患者さんに待ち望まれてきた、より効果が期待できる治療選択肢を新たに提供できることを嬉しく思う。

◆白沢博満MSD代表取締役上級副社長グローバル研究開発本部長のコメント
 前立腺がんは、日本の男性がかかるがんで最も多く、転移性に進行した患者さんの治療選択肢は限られている。MSD は、BRCAmのmCRPC に対する新たな治療選択肢を提供することで、これまで以上に患者さんと医療従事者のニーズに応えていきたいと考えている。

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