早稲田大学スポーツ科学学術院の秋本崇之教授、及川哲志元助教(現ハーバード大学ポスドク)らの研究チームは、生体の骨格筋におけるmiRNAの生物学的半減期を明らかにした。
タンパク質へ翻訳されないRNAの1つであるマイクロRNA(miRNA)の骨格筋における安定性に着目し、RNAを標識・追跡する技術および逆遺伝学的なアプローチから解明したもの。研究成果の発表のポイントは、次の通り。
1、マウス成熟骨格筋で新たに合成されたmiRNAを標識・追跡する技術および逆遺伝学的なアプローチにより、生体の骨格筋におけるmiRNAの生物学的半減期を明らかにした。
2、骨格筋に発現するmiRNAは、心臓や肝臓に発現するmiRNAと比較し、生物学的半減期が短いことが明らかになった。
3、miRNAは動物の個体発生やがん、心血管疾患などのさまざまな生命現象に重要な機能を持つことが知られているが、その非常に安定な可能性がある生体骨格筋のmiRNAの生物学的半減期を調べることによって、各々の組織におけるmiRNAの代謝動態の多様性に関して理解が深まることが期待できる。
これらの研究成果はThe FEBS Journalに7月31日に掲載された。
同研究から、心臓や肝臓に発現するmiRNAと比較して、骨格筋に発現するmiRNAの生物学的半減期が短いことが明らかになった。
この研究成果によって、各々の組織におけるmiRNAの代謝動態の多様性に関して理解が深まることが期待される。さらに、その多様性を調節する分子メカニズムに関して今後研究が発展していくものと考えられる。
今回、成熟骨格筋のmiRNAは安定した分子ではなく、速やかに代謝される可能性が示されたが、このようなmiRNAの素早い代謝がどのように調節されているかは明らかではない。
さらに、今回の研究から、比較的優れた安定性を有するmiRNA(miR-133a)とそうでないもの(miR-1, miR-206)が存在することが明らかになった。今後は、miRNAの安定性や分解を調節する分子メカニズムを探索すると共に、個々のmiRNAの安定性の違いやそれらが如何に調節されているかについても検討していく。