大阪府薬剤師会は5日、定例記者会見を開催し、乾英夫会長が、薬局DX推進コンソーシアムの国家戦略特区による調剤業務の一部外部委託の再提案について、「どのような形で進めるのかを見据えた上で、本来の目的である‟薬剤師の対人業務の充実”に本当に繋がるのかしっかりと確認する必要がある」と強調した。
薬局DX推進コンソーシアムは、本年6月1日、ファルメディコを中心にアインファーマシーズやウエルシア薬局など27社で発足したもの。
乾氏は、6月19日に開催された第1回大阪府感染症対策部会にも言及し、「大阪府では、病院・診療所だけでなく、薬局に対しても自宅療養の患者を中心に、薬剤供給の対応ができるかなどの医療機関調査(事前調査)を7月14日まで実施している」と報告。
その上で、「この事前調査は、予防計画策定・協定締結に先立つもので、実際、新型コロナの各ピーク時に多くの薬局が対応してきた。従って、大阪府下の多数薬局が対応できると考えている」と述べた。
また、2023年度大阪府薬剤師会分業施策では、「小児在宅対応薬局の整備」、「大阪府薬剤師会学術研究カンファレンスの実施(8月27日)」、「薬局DX・データヘルス集中改革プランに係る課題への対応」、「新興感染症等の感染拡大時における医薬品、検査キッド等の供給体制の整備」などが新しく盛り込まれていることも発表された。
乾氏は、調剤業務の一部外部委託について、「昨年度に厚労省がガイドラインを作成し、今年度は実証が行われる」と説明し、「もし、大阪で国家戦略特区による調剤業務の一部外部委託の再提案が採択されて進むのであれば、薬局DX推進コンソーシアムと話し合いの場を持ちたい」と明言。さらに、「その場で、安全の担保が取れるのか、薬剤師の対人業務の充実に繋がるのかを確認する」考えを示した。
羽尻昌功常務理事も、6月24日に開催された日本薬剤師会定時総会のブロック質問において、「大阪での国家戦略特区による調剤業務の一部外部委託について、薬局独自の個別対応を外部に委託するのは患者にとって有用なのか、薬剤師の対人業務の充実につながるのかを聞いた」と報告。
その上で、「‟国家戦略特区による調剤業務の一部外部委託の推進には断固反対する”日薬の見解を確認した」と強調した。
新型コロナ感染症の現況では、乾氏が「第9波に入った実感がある。薬局では、ゾコーバ、ラゲブリオなどの院外処方箋による供給も行っており、引き続き自宅療養患者への対応を充実していく」考えを強調。
続いて、道明雅代副会長が、大阪府と各薬局との予防計画策定・協定締結に先立つ事前調査について、「新型コロナ感染症のような新興感染症が拡大した時に、自宅療養や宿泊療養、高齢者介護施設などにおいて、どの薬局が対応できるかを網羅的に確認するもので、大阪府下4500軒の全薬局を対象としている」と説明した。
松浦正佳常務理事は、2023年度大阪府薬分業施策の柱として、①掛かり付け薬剤師・薬局の推進、②地域連携薬局、専門医療機関連携薬局の認定に向けた取り組み、③研究マインドを兼ね備えた薬剤師の育成、④薬局DX・データヘルス集中改革プランに係る課題への対応、⑤医薬品提供体制整備のための取り組み、⑥府民が安心して医薬品を使用できる環境の整備、⑦地域による格差なく、薬剤師サービスを享受できる環境の整備、⑧薬剤を取り巻く課題の検討ーを紹介。
医薬品提供体制整備のための取り組みでは、平時においては、「医薬品備蓄ネットワークの整備」、「無菌調剤への対応」、有事では、「新興感染症等の感染拡大時における医薬品、検査キッド等の供給体制の整備」などを挙げた。
薬剤を取り巻く課題の検討では、「医薬品の安定供給」、「敷地内薬局」、「調剤業務の委受託」を指摘した。
電子お薬手帳、新システム「eお薬手帳3.0」への移行については、堀越博一常務理事が、「これまでの運営事業者であるNTTドコモの‟eお薬手帳”でのサービスが終了し、新たな運営事業者としてファルモを選定した」と経緯を説明。
さらに、「本会では、国民・薬局がメリットを享受できるようにファルモ社と協議を重ね、機能を拡充した患者向けスマートフォンアプリ及び薬局システムである‟eお薬手帳3.0”を新たに開発し、7月3日に公開した。薬局システムは6月下旬から申し込みを開始している」と紹介した。