いびきと柴胡桂枝湯

 同居人から「いびきがうるさくて寝られない」と言われ、自分のいびきが迷惑なほど大音量であることを知りました。いびきをかく自覚はありましたし、自分のいびきに一瞬驚いて目を覚ますこともありましたが、まさか人の睡眠の妨げになっているとは知らず、かなり驚きましたし恥ずかしい思いをしました。
 さっそく改善策をネットで調べましたところ、鼻腔拡張テープが効果的とあり、さっそく購入いたしました。次には、手の小指の付け根の外側にあるツボを刺激していびきをとめるというリングを購入しました。この両方を同時に使用したところ、幾分音量は下がったようでした。
 ところが、偶然に風邪をひいたのかわかりませんが、使用2~3日後に鼻の奥が痛く熱感を持ち、鼻出血が起こりました。夜中も目が覚めるという現象が起こりました。もしからしたらこれらのいびき対策グッズが何らかの作用をしたのかもと思い、とりあえず使用を止めました。
 鼻腔を拡張させることと交感神経とに繊細な関係があるのか自律神経系になんらかの異変が起こったのかもしれないと思いましたが、これは勿論自分勝手な推測で、レビューを見てもそのような報告は一例もありませんでした。
 改善策をさらに調べ続けているとネット上の文献で「柴胡桂枝湯がいびきに有効」というものを見つけました。以前から長引く風邪の時や胃腸障害のある風邪の時は好んで柴胡桂枝湯を服用しており、好きな漢方製剤です。
 『漢方製剤 活用の手引き:証の把握と処方鑑別のために』によりますと、「小柴胡湯と桂枝湯の合法であり、急性症においては、発熱数日後に交互におこる悪寒と発熱を目標とする。この場合、発汗、頭痛、関節痛、心窩部のつかえ感、悪心・嘔吐、胸やけなどの症状を伴う。慢性症においては、肋骨弓下部の抵抗・圧痛と両側の腹直筋の緊張を目標とする。不安・不眠、のぼせ、腹痛などを伴うこともある」と証に掲げられています。
 応用疾患・症状として、「呼吸器:かぜ症候群、インフルエンザ、肺炎などの熱性疾患、肺結核、胸膜炎。消化器:急・慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胆嚢炎、胆石症、急・慢性肝炎、慢性膵炎、上腹部不定愁訴、潰瘍性大腸炎、慢性腹膜炎。精神神経:神経症、不眠症、てんかん、夜尿症。神経・筋:肋間神経痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症。耳鼻咽喉:中耳炎、鼻炎、副鼻腔炎」と記載されています。「柴胡桂枝湯がいびきに有効」の記載はこの手引きには記載されてはいませんでした。
 ネットでは“いびき”に対する柴胡桂枝湯の治療効果を報告する抄録は以下のようにありました。「いびきのひどい12例 (脳卒中7例を含む、平均53.3歳, 男10, 女2例) に対するツムラ柴胡桂枝湯エキス剤7.5g/日の治療効果を検討した。
 効果判定は第三者の観察によるが、2週間後にはほぼ消失2例 (17%)、半減4例 (33%)、やや改善5例 (42%)、変化なし1例 (8%)と、ほとんどの症例に効果が認められた。
 また、効果発現には3~6日を要し、改善点はいびきの音量の減弱であり、柴胡桂枝湯を中止すると2~4日でいびきの音量も元に戻った。1例での投与方法の検討では倍量の夕食前5.0g1回投薬でも、通常投薬と同等の効果が1週間後判定で得られた。作用機序としては、柴胡桂枝湯にはテンカンに対する治療効果が知られていることから、何らかの脳神経中枢作用を介している可能性が考えられる。いびきの漢方療法として、柴胡桂枝湯では最初の改善報告と思われる。」
 私は、柴胡桂枝湯7.5g/日を7日間服用し、音量はかなり下がったと同居人談。今は服用を中止していて、今のところ症状安定です。次に再発した時にはボイスレコーダーでいびきをを録音し、柴胡桂枝湯服用後のボイスレコーダーと比較をしたいと考えています。

                                 薬剤師 宮奥善恵

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