アストラゼネカは12日、リムパーザとアビラテロンとの併用療法について、BRCA遺伝子変異陽性転移性去勢抵抗性前立腺がんの治療薬として米国で承認を取得したと発表した。
対象は、BRCA遺伝子の病的変異または病的変異疑いのある(BRCAm)転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)の成人患者。
同承認は、BRCAmを有する患者において、リムパーザとアビラテロンの併用療法が、アビラテロン単独療法と比較して、画像診断による無増悪生存期間(rPFS)(ハザード比[HR]0.24、95%信頼区間[CI]0.12-0.45)および全生存期間(OS)(HR 0.30、95%CI 0.15-0.59)のいずれにおいても臨床的に意義のある延長を示した示したP3PROpel試験のサブグループ解析に基づくもの。
アビラテロン単独で治療した患者では、rPFS中央値およびOS中央値が8ヵ月および23月であったのに対し、リムパーザとアビラテロンの併用療法で治療した患者ではそれぞれ未到達であった。
前立腺がんは男性では2番目に多いがんで、mCRPC患者に対する治療法が増えているにもかかわらず、5年生存率は依然として低いままである。mCRPC患者の約10%にBRCAmが認められ、これが予後不良および転帰不良と関連している。
PROpel試験におけるリムパーザとアビラテロン併用療法の安全性および忍容性は、過去の臨床試験で観察されたものおよび個々の医薬品の既知のプロファイルと一貫していた。
リムパーザとアビラテロンおよびprednisoneまたはプレドニゾロンによる併用療法のリムパーザは、PROpe試験の結果に基づき、欧州連合(EU)および他の数カ国においてmCRPC患者に対する治療として承認されている。
なお、リムパーザはP3相PROpel試験結果に基づいて、エンザルタミドまたはアビラテロンによる前治療後に進行した相同組換え修復(HRR)変異を有するmCRPC(BRCAmおよび他の HRR 変異陽性)患者に対する単剤療法として米国で承認されており、欧州、日本および中国では、新規ホルモン製剤治療を含む前治療後に進行した BRCAm mCRPC患者に対する治療として承認されている。
◆P3相PROpel試験治験担当医師のAndrew Armstrong 氏(デュークがん研究所医師)のコメント
画像診断による病勢進行や死亡の予防またはその期間を延長させることは、がん治療を評価する上での重要な臨床評価項目であり、患者さんとその介護者やご家族にとって非常に重要である。
PROpel 試験の結果は、BRCA遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がんの標準治療としてリムパーザの併用療法を迅速に検討すべきであるという臨床的に意義のあるベネフィットを示した。
◆Dave Fredricksonアストラゼネカエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者のコメント
BRCAmの転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんには、新たな一次治療選択肢に対する極めて高いアンメットニーズがある。今回の承認は mCRPC 診断時におけるBRCA遺伝子検査の重要性を裏付けている。
治療のより早期の段階で患者さんにリムパーザ併用療法のベネフィットをお届けできることを期待している。
◆Eliav Barr MSD研究開発本部シニアバイスプレジデント、グローバルクリニカルディベロップメント責任者兼チーフメディカルオフィサーのコメント
現在の標準治療を基盤にしながら、進行がんを治療し患者さんの転帰改善につながる新たな選択肢を作り出すことは必須である。 PROpel試験では、BRCAmの転移性去勢抵抗性前立腺がん患者のサブグループにおいて、リムパーザの併用療法によりrPFSおよびOSが延長した。
今回の承認により、治療方針決定の指針となる転移診断時における遺伝子変異検査の重要性が裏付けられた。