2033年度に売上規模1兆円企業目指して 長期経営戦略および中期経営計画策定 シスメックス

 シスメックスは、グループの成長持続とそれを支える経営基盤の強化に向け、2033年度を最終年度とする新たな長期経営戦略を策定した。併せて2026年3月期を最終年度とするグループ中期経営計画を策定し、今後取り組むべき重要な事項を定め、具体施策を推進する。
 2033年度の売上目標は1兆円。中期経営計画の最終年度となる2025年度の業績目標は、売上高5600億円、営業利益1120億円、ROE16.0%、キャッシュ・フロー460億円。
 シスメックスは、2018年に発表した長期ビジョンである「特徴ある先進的なヘルスケアテスティング企業」を目指したダイアグノスティクス事業の強化とともに、COVID関連検査薬やアルツハイマー検査薬など、新たな検査法の開発を進めてきた。また、新規事業への挑戦として手術支援ロボット事業をスタートさせた。
 その間、気候変動・地政学リスクの拡大など、世界レベルで不確実性が高まり、持続可能な社会の実現に向けた企業への期待や重要性が年々増している。
 こうした中、シスメックスは、グループ企業理念である「Sysmex Way」のもと、2033年を最終年度とする新たな長期経営戦略を策定した。多様化・複雑化するヘルスケアニーズへの対応や、社会が抱えるさまざまな課題の解決に向け、同社企業理念の根幹にある「安心」をすべてのステークホルダーに届けることを目指す。

ヘルスケアジャーニー:人が一生の中(ライフステージ)で、自身のヘルスケアについて経験する各種イベントと、医療機関などを含む対応のプロセスを「旅路」として捉えるものである。「より良いヘルスケアジャーニーの実現」は世界の人々のQOL向上という重要な社会的課題の一つである。

 また、新長期ビジョン「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」を定め、一人ひとりの生涯にわたるヘルスケアの旅路がより良いものになるよう、検体検査領域におけるイノベーションの創出に加え、未病・予防や治療領域へのチャレンジにより、新たな価値を提供。2033年度には、売上高1兆円規模の企業を目標としている。
 そのため、まず2023年度から3年間の中期経営目標および取り組むべき重点課題を設定し、具体施策を実践していく。長期経営戦略のポイントおよび 中期経営目標達成に向けた重点課題は次の通り。

【長期経営戦略のポイント】

1)対象領域を、ダイアグノスティクスからヘルスケアジャーニーへ拡大
 より良いヘルスケアジャーニーの実現のためには、医療レベルや質の向上、ヘルスケア情報の利活用に加え、医療経済性の改善など、ヘルスケアに関わるプロフェッショナル(医療機関、医療従事者など)の役割は非常に重要である。
 シスメックスが検体検査領域で培った技術・事業ノウハウを生かし、最新のテクノロジーを用いた付加価値の高い検査・診断技術の創出に加え、外科医療や再生細胞医療の治療領域への挑戦など、ヘルスケアジャーニー全体において当社の強みを生かし価値創出できる領域を選択・追加し、企業価値向上につなげていく。

2)自社の強みを生かした事業成長の加速
 ダイアグノスティクス事業を基軸とした事業の深化と、イノベーションによる付加価値の追求により、成長性・収益性の向上を目指す。加えて、ダイアグノスティクスとは異なる領域への挑戦により、新たな企業価値を創出し、成長を加速させていきます。長年培ったグローバルな顧客ネットワークは当社の資産であり、顧客ロイヤリティ測定指標NPS(Net Promoter Score)を活用し、さらなる顧客価値の向上を追求する。

【中期経営目標達成に向けた重点課題】

1) 既存事業領域のイノベーションによる競争力の強化と市場の拡大
 免疫検査分野において、「全自動免疫測定装置 HISCL-5000/HISCL-800」シリーズの試薬項目の拡充、アルツハイマー病の診断支援を目的としたビジネスの早期事業化を推進する。
 ヘマトロジー分野では、「多項目自動血球分析装置 XRシリーズ」のグローバル展開を加速し、成長性・収益性の向上を目指す。
 また、人口増加および経済成長、医療品質の向上が大きく期待される新興国において、市場ニーズに適した製品の導入を進め、医療アクセスの向上や医療インフラ強化に貢献する。
 特に、インドを重要市場と位置付け、事業企画・製品開発・市場導入を加速させ、新興国における市場シェアの拡大に取り組む。
 また、血液凝固検査分野においては、Siemens Healthcare DiagnosticsとのグローバルOEM契約締結に基づく販売体制を強化し、顧客価値のさらなる向上を目指す。

2) 個別化医療領域における、遺伝子検査を中心とした事業化の加速
 今後、大きな成長が期待される個別化医療領域において、シスメックスが強みを持つリキッドバイオプシー技術(遺伝子、細胞、タンパク)を活用した新規項目開発に取り組む。
 自社が有する研究用製品・技術を活用し、個別化医療領域をけん引する技術の商品化および市場導入への移行を目指す。加えて、シスメックスの検査技術の組み合わせやデジタルサイエンスの活用により、造血器腫瘍、癌、遺伝性疾患、加齢関連疾患などを対象とした新たな診断ソリューションの創出に取り組む。

3) 予防・セルフメディケーション領域における新たなビジネスモデルの創出
 社会的ニーズがさらに高まる予防・セルフメディケーション領域において、より個人を主体とする医療への移行が予想されるため、在宅検査・高齢者向け低侵襲検査を可能とする製品・サービスの開発を推進する。個人の時系列データ、集団の統計学的データの両面からの初期医療支援、ヘマトロジーなどの既存アセットを生かした集団感染の予防やマラリアなどの感染症向け検査の充実に取り組み、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を実現していく。

4) 治療領域における、MR事業を中心とした事業成長の加速
 手術支援ロボット「hinotoriサージカルロボットシステム」による外科領域のビジネスを日本で着実に拡大させるとともに、グローバル展開に向け、海外薬事承認取得に向けた活動を推進する。
 また、同社が検体検査領域で培った技術やノウハウを生かすことで、再生細胞医療や遺伝子治療など、診断と治療の境界に位置する領域での新たな事業の創出や、革新的なデジタル技術の社会および医療への実装を見据えたオープンイノベーションを推進し、医療データを利活用した新たな事業の創出にも取り組む。

5) 資源循環型バリューチェーン実現と社会課題解決に向けた変革
 2040年のカーボンニュートラルの達成に向け、包装材、消耗品をターゲットに環境配慮材料へと切り替え、脱プラスチックを推進する。
 また、全てのバリューチェーンで4Rによるグリーンイノベーションを創発し、顧客、アライアンスパートナー、他社、サプライヤーなどとのオープンイノベーションとともに、資源の無駄を出さない循環型バリューチェーンの変革を行う。
 医療課題の解決、品質の向上、環境配慮への対応強化、ガバナンスの強化など、当社の持続的成長に向けた優先的に取り組むべき課題(マテリアリティ)やサステナビリティ目標に基づき、事業活動を通じた社会課題解決への貢献を通じて、サステナビリティ経営を推進していく。

6) 人的資本および経営基盤強化を通じた企業価値の向上
 持続的な成長を支える次世代リーダーと高度専門人材の獲得および育成を通じ、経営戦略に合わせた人的資本ポートフォリオの拡充を図る。
 さらに、スマートワークの推進や公正で魅力的な企業カルチャーの醸成によるエンゲージメントの向上に取り組みます。引き続き、内部統制の仕組み強化とリスクマネジメント機能の最適化によるグループ管理の高度化、DXによる業務プロセスの改善と生産性の向上に取り組む。

 シスメックスは、健康で長生きをしたいという人々の普遍的な願いに寄り添い、独自のテクノロジーとソリューションを通じて、一人ひとりに最適な医療の実現に貢献していく。
 

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