住友ファーマは15日、ライブ配信による2023年3月期決算説明会を開催し、野村博社長が、「2024年度の黒字化に向けて米国での基盤製品拡大とコスト削減を推進し、2023年度業績予想を堅実に達成したい」と強調した。
大塚製薬と共同開発中の自社化合物「ユーロタロント」(抗精神病薬、SEP-363856)にも言及し、「2023年度上期には、統合失調症のP3試験結果が出る」と報告。「できるだけ早く米国で承認申請して2024年度の承認に繋げたい」と期待を寄せた。
国内事業では、そのユニークな作用メカニズムによって医療現場で予想以上に浸透し、品不足となっているツイミーグ(2型糖尿病薬)について、「現在は限定生産しているが、増産に向けて準備しており夏には正常化する」との見通しを示した。ツイミーグの2023年度売上予想額は42億円(89.3%増)
住友ファーマの2022年度経営成績は、売上収益5555億円(対前年比0.8%減)、コア営業利益164億円(72%減)、営業利益△770億円(-)。研究開発費は1061億円(12.8%増)
米国の大型主力品ラツーダ(非定型抗精神病薬)は、2023年2月の特許切れによる出荷数量の減少や想定外のペイヤーミックスの変化による販売価格の低下等で減収し、粗利を減らした。コア営業利益では、その他の⾮経常項⽬として、パーキンソン病に伴うオフ症状治療薬キンモビ減損損失(556億円)、 AXL受容体チロシンキナーゼ阻害剤TP-0903減損損失(206億円)、北⽶事業構造改善費⽤ (127億円)などの減損損失967億円を計上した。
ラツーダの特許切れでボトムとなる2023年度の業績は、売上収益3620億円、コア営業利益△620億円、営業キャッシュフロー△1300億円、ROIC△8.5%、ROE△21.9%、研究開発費840億円を見込んでいる。
2023年度業績予想達成に向けて中心となるのは、米国で上市しているジェムテサ(過活動膀胱治療剤)、オルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)の3つの基盤製品だ。
それぞれの売上収益として、ジェムテサ470億円(90.5%増)、オルゴビクス515億円(108.5%)、マイフェンブリー249億円(454.1%増)を掲げている。
野村氏は、米国子会社のユーロバント社が販売するジェムテサについて、「堅調に目標額を達成する」と確信する。
一方、米国子会社のマイオバント社が販売し、ファイザーとコ・プロモーションしているオルゴビクス、マイフェンブリーは、「昨年度のマイオバント社の100%子会社化により、この売上収益が可能と判断して計画を立てた」と説明する。
その上で、オルゴビクスも、「まだ保険償還の手続きが慣れていないものの、目標売上収益額を達成する」見通しを強調した。
対前年比454.1%増を見込むマイフェンブリーは、「かなりの伸びを期待した売上目標設定になっているが、子宮筋腫、子宮内膜症において広範な保険カバレッジを獲得済みである」と述べ、「患者とドクターに有用性を訴求してこの製剤の関心を高めていく」戦略を明かした。
マイフェンブリーには、「患者の自己負担を低下するためのコ・ペイカードの使用が多い」という課題もあり、「その辺りもきっちりと修正してプロモーションをかけていきたい」と明言した。
木村徹代表取締役専務執行役員も「マイフェンブリーは、昨年5月に子宮内膜症の適応拡大承認が取得できると予測していたが、8月にずれ込んだ」と振り返り、「その影響が大きく出て昨年度は数量が伸びなかったが、現在は子宮内膜症と子宮筋腫でプロモーションを掛けており、かなりの伸長が期待できる」と語った。
一方、2023年度のコスト削減効果は、ラツーダの販売人員減少と北米での人員削減を併せて「600億円強の減少」が見込まれる。
北米における2024年3月末のセールスレップ数は1800人程度で、その後、ユーロタロントの上市に伴い増加していく見通しにある。 野村氏は、「ユーロタロントは、ラツーダと違って利益が大塚製薬と折半になるため、コストマネージメントをしっかり行って販売体制を決めていきたい」と強調した。
さらに、「2年連続の赤字は避けたい」と訴求し、「2023年度はしっかりとモニタリングして、第2、第3四半期に業績目標額の達成が可能かどうかを検証し、その進捗状況によっては2024年の黒字化達成に向けての追加プランを立てる」可能性も示唆した。