小野薬品の相良暁社長は10日、2023年3月期決算説明会で会見し、ポスト「オプジーボ」に向けて今後の成長の大きな役割を担う米国展開について、「順調に進捗している」と報告した。
相良氏は、研究開発費にも言及し、「2023年度は1090億円(対前年比14.3%)を見込んでいる。ようやく第一ステップの1000億円に手が届く。できるだけ早い時期に年間2000億円を投資できる企業になりたい」と明言。
さらに、「オプジーボの特許切れをしっかり乗り越えるためにも、積極的な投資を進めて行きたい」と改めて強調した。
小野薬品の2023年3月期決算は、売上収益4471億8700万円(前期比23.8%増)、営業利益1419億6300万円(37.6%増)、税引前利益1435億3200万円(36.7%増)、当期利益1129億1300万円(39.9%増)で、売上収益・利益ともに過去最高、5期連続増収・増益となった。
24年3月期の業績予想は売上収益4750億円(6.2%増)、営業利益1530億円(7.8%増)、税引前利益1540億円(7.3%増)当期利益1152億円(2.0%増)
2022年度のオプジーボの売上高は1423億円(対前年比26.6%増)で、2023年度は1550億円(8.9%増)を見込んでいる。
オプジーボは、非小細胞肺がんと腎細胞がん領域において競合品市場が激化しており、新規処方獲得が厳しくなっている。
その一方で、一昨年に適応拡大承認を取得した胃がんの一次治療、食道がんの一次治療、昨年取得の尿路上皮がんの術後アジュバントに関してはさらなる伸長が期待できる。これらを鑑んで2023年度の伸長率は、対前年比8.9%を予測している。
オプジーボの特許切れは各国で異なり、2026年から2031年までの間に徐々に切れていく。同社業績に大きな影響を及ぼす日本での特許切れは8年後の2031年に控えており、同年3月にメラノーマ、5月には多くの適応症で特許が満了する。
ポストオプジーボに向けて同社は、昨年4月27日に米国現地法人であるONO PHARMA USA, INCをマサチューセッツ州ケンブリッジに移転し、新オフィスを開設した。新オフィス開設は、「米国での臨床試験展開、承認取得、販売」を目的としたもの。米国スタッフは現在100名を超えている。
米国での自社販売製品第1号となる中枢神経系原発リンパ腫治療薬「ベレキシブル」(ONO-4059、米国P2)は、2024~25年の上市を見込んでおり、「発売時にはスタッフ150名体制になる予定である」(相良氏)
ポストオプジーボ対策では、研究開発におけるライセンス活動にも余念がない。昨年12月、米国Equillim社と急性移植片対宿主病を対象に開発中の抗CD6抗体「イトリズマブ」について独占的オプション権付アセット買収契約を締結した。イトリズマブは、ベレキシブルに次ぐ米国販売製品として期待されている。
さらに、T細胞リンパ腫治療薬「ONO-4685」(米国P1)、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病治療薬「ONO-7018」がこれに続く。
研究開発における様々なライセンス活動における具体的な効果について滝野十一取締役専務執行役員研究本部長は、「もともと強くなかったバイオにも積極的に取り組んでいる。特異ながん領域においても、マクロファージを標的とした新しい試みにトライしている」と報告した。