小野薬品の相良暁社長は31日、2022年度中間決算説明会で会見し、「オプジーボ、フォシーガの伸長や円安によるBMS、メルクからのロイヤリティの増加などにより、当中間期は売上収益、各利益ともに過去最高となった」と報告した。
通期見込みについても、「為替の影響、為替見込みに基づいて前回予想(5月11日)を上方修正した」ことを明らかにした。
2022年度中間決算(カッコ内は前年同期比)は、売上収益2167億円(24.5%増)、営業利益803億円(38.0%増)、税引前当期利益810億円(36.8%増)、当期利益623億円(34.7%増)。
通期予想は(カッコ内は前回予想との増減額)、売上収益4400億円(150億円増)、営業利益1490億円(40億円増)、税引前利益1500億円(40億円増)、当期利益1142億円(41億円増)を見込んでいる。
当中間期のオプジーボのロイヤリティは、BMSから421億円(対前年同期比82億円増)、メルクから214億円(キーイトルーダ、同72億円増)。それぞれの増加分における為替の影響は、82億円中75億円、72億円中37億円で、「併せて110億円を超える為替のプラス影響が出た」
相良氏は、為替影響について、「1円円安に振れれば、売上高で11億円プラス、費用で3億円マイナスとなりネット8円のプラスになる。円安が続く限りプラスが大きく、円高に振れればマイナスが大きくなる。ただし、海外の臨床試験が増えてくれば、マイナスが大きくなる」と説明し、「今後の事業の進捗状況と合わせて注視していく必要がある」との考えを示した。なお、下期の為替レートは、1ドル=130円を想定している。
当中間期のオプジーボの売上収益は699億円(24.6%増)で、胃がん、食道がんの術後補助療法などでの使用が拡大した。通期予想は1550億円。
オプジーボの薬価引き下げについては、「類似薬の市場拡大再算定により供連れで同率引き下げられる可能性があるが、他社製品の売上予想は判らない」とした上で、「オプジーボの次回のハードルは恐らく2000億円を超えた辺りになるだろう」と予測した。
一方、フォシーガは、264億円。その内訳は、糖尿病160億円、慢性心不全40億円、慢性腎臓病60億円。相良氏は、フォシーガの特許について、「2025年12月にジェネリックが上市されたとしても2型糖尿病だけの効能効果になる」見込みを示した。
フォシーガは、2014年5月に2型糖尿病を効能効果に上市された。その後、2019年3月に1型糖尿病、2020年11月に慢性心不全、2021年8月に慢性腎臓病が効能追加された。1型糖尿病、慢性心不全の特許は、2028年5月まで延長されることが決定し、慢性腎臓病についても同様の期間まで延長される見通しにある。
9年後のオプジーボ特許切れは、欧米での新製品数品目上市でカバー
相良氏は、「ポストオプジーボと海外戦略」にも言及した。オプジーボの特許切れは各国で異なり、2026年から2031年までの間に、徐々に切れていく。その中で、小野薬品の業績に大きな影響を及ぼす日本での特許切れは9年後の2031年に控えている。
「オプジーボは、売上収益1500億円、ロイヤリティ1000億円を超えるブロックバスターで、大きなウエートを占めている。これに取って代わる製品を生み出すのは極めて難しい」と明言する相良氏。
その上で、「日本と比べて5倍の米国市場、2倍のヨーロッパ市場において、数品目上市することでオプジーボの特許切れをカバーする」考えを示した。
米国P2段階にあるベレキシブル(ONO-4059、中枢神経系原発リンパ腫治療薬)は、米国での自社販売製品第1号として2024~25年の上市が期待されている。その他、欧米で6つの化合物の新たな臨床試験が開始されている。