福岡市、九州大学、電通は12日、医療・健康データを自己管理できる社会実現を目指した日本初の「PHR福岡プロジェクト」の共働事業に関する協定を同日に締結したと発表した。
「PHR」は、Personal Health Recordの略称で、個人が自ら保有し利活用する健康医療データを意味する。データは、個人情報保護関連法および情報セキュリティガイドライン(3省2ガイドライン)の法規則・指針に則り、適切に活用・共有する。
同協定に基づき3者は、市民がシステムの種類に関係なく医療・健康データを自己管理できる社会の実現を目指した「PHR福岡プロジェクト」を開始する。
昨今、超少子高齢社会による「2025年問題」に対し、産官学各々の立場から健康医療をテーマに対策が進んでいる。九州大学と電通は2021年7月に産学連携協定を締結し、次世代医療データプラットフォームの社会実装に向けた取り組みを進めてきた。
より快適で便利な医療・健康サービスの提供を実現するには、データを管理する組織やシステムの種類にかかわらずデータの相互連携が必要だ。だが、日本の医療機関では、電子カルテが浸透しデジタル化が進む一方で、医療機関同士のデータ連携は課題となっている。
また、健康診断結果や服薬履歴、IoT機器やウェアラブルデバイスから取得できるライフログ(生活データ)等の、健康データ連携も対処すべき課題である。
そこで、これらの課題を解決し、市民がシステムの種類に関係なく医療・健康データを自己管理できる社会の実現を目標に、同プロジェクトを開始する。
同プロジェクトは、システムの種類に関係なくデータ連携を可能とする医療データの取り扱いに関する国際標準規格・HL7 FHIRに準拠したPHR基盤を活用した日本初の取り組みである。「HL7 FHIR」は、米国のHL7協会が開発した医療情報交換のための新しい標準仕様(規格)で、厚労省も推進している。
マイナポータルで管理できる特定健診データ、各医療機関が所有する医療データ、そして市民が所有する健康データを統合処理し、市民が専用のスマートフォンアプリ「Tsunagu PHR」を使って各種データを自己管理できる仕組みを提供する。
同協定において、福岡市は実証環境の調整や広報、九州大学はPHR利活用の管理および知見の提供、電通はプロジェクトの推進およびユースケース(活用事例)の開発を担当する。3者は、同協定における取り組みを通じてPHRの社会実装を推進し、PHR基盤を活用した市民サービスの向上を目指していく。
実証実験として12月より 生活習慣病患者の服薬履歴をもとに医師・薬剤師の服薬指導開始
なお、この仕組みを活用した市民の体調管理をサポートする実証実験として、本年12月より「生活習慣病患者の服薬履歴をもとにした医師と薬剤師による服薬指導の取り組み」を実施する。「Tsunagu PHRの社会実装に向けたかかりつけ薬剤師ユースケースの実証」事業の概要は、次の通り。
◆参加者:九州大学病院他に通院する患者約60名
◆期間:2022年12月~2023年2月
◆内容:薬局を通じて市民(薬局利用者)にPHRアプリを提供、本人が服薬履歴をアプリに入力し、医師・かかりつけ薬局・家族と共有する。
九州大学病院の医師と薬局の薬剤師が一体となって服薬指導を実施し、生活習慣病の重症化予防に取り組む。飲み忘れアラート通知も活用し、タイムリーで適切な指導を実現する。