この夏の思い出

 この2年、コロナ禍でお盆に集うことを躊躇していましたが、今夏は長女も帰国することができたので少しは集う機会のあるお盆を過ごすことができました。
 皆で十数年ぶりに八ヶ岳の友人の別荘を訪れ、気温19度の中、自然をたっぷり楽しむことができました。昆虫の生態系も都会とは違っていて、蜘蛛の大きさや見たことのない蝶や蛾には、興味津々の孫の好奇心を満足させる納得のいく説明に手こずりました。
 土地の野菜は新鮮で美味しく安く、素材の味を活かしたお料理に驚きが隠せませんでした。綺麗な空気と景色と食べ物に十数年分の心まで洗われたようでした。
 職場に戻るとすぐに大阪府感染症対策企画課感染症・検査グループの配布する若年軽症者への抗原検査キットの無償配布事業が始まりました。この事業に応募したのは締め切り間際でしたが、土曜日・日祝日も対応可能のアピールをしましたので、電話やメールでの予約が多く、処方箋窓口とは別の窓口を開設して専門に対応する業務が始まりました。12歳から49歳の大阪府民で軽い症状の方対象です。
 検査キットの配布には、説明文を付けていて、検査結果が陽性の場合はQRコードからオンライン診療を受けることができます。オンライン診療で薬が処方された場合、薬局に連絡が来て、患者さんの家に薬を配達することがあります。
  それとは別に、コロナ治療薬ラゲブリオの処方もあり、広い範囲で配達を依頼され自転車や自動車で向かいます。多くはナビを使用しますが、まだナビのない学生の頃から培った土地勘が結構役に立ちます。
 久しぶりにいく場所になつかしさを感じることもしばしばで、ふとその場所にまつわる昔の経験に思いを巡らせたり、その辺りに住んでいた人やよく行ったお店を思い出したりして、お仕事なのに勝手に思い出もくっつけて感慨深い気持ちを抱きながら配達をしています。
 また、これらの仕事をする中で地域の人々のお役に立てていることを感じます。処方元の医療機関とのやりとりをし、薬局スタッフ一同協力して分担しながら地域連携を担っています。特にラゲブリオには同意書が必要ですし、渡したあとには事例報告も行います。
 訪問看護師さんからの質問にはMSDのホームページでは解決できない難しい質問もあり、例えば胃瘻では効果あるのだろうかなど、大きいカプセルの服用について質問をいただきました。確かに今までにはない医療の連携を実感します。新しい連携と昔の経験がハーモニーを生み出しているように思います。
 八ヶ岳を訪れることのなかった十数年間に、それまで経験したことのないネガティブな心を持ち続けていました。原因は自分にありましたが、今回のハーモニーをもってその悲しみも卒業できるような気がしています。悲しみは一番持続しやすい感情であるそうですが、それを乗り越えることで人は成長するそうです。
 この夏の経験で成長して、またどなたかの何かのお役に立てたらと思います。

薬剤師 宮奥善恵

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