MSDは20日、MRSA感染症治療薬「キュビシン」について、小児に対する用法及び用量で追加承認を取得したと発表した。
同剤は、他の抗MRSA薬とは異なる作用機序で、グラム陽性菌の細胞膜にカルシウムイオン濃度依存的に結合及び浸透し、細胞膜中でオリゴマーを形成(ミセル化)して、膜電位の脱分極を引き起こし、カリウムイオンを流出させる。
その結果、蛋白質、DNA及びRNAの合成を阻害し、溶菌を引き起こすことなく細菌が死滅する。さらに、TDM(薬物治療モニタリング)の必要がなく、1日1回投与による敗血症、深在性皮膚感染症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染を適応症とする抗MRSA薬として、小児患者に対する新たな治療選択肢として期待される。
同承認は、国内外の小児患者(1歳以上17歳以下)を対象とした臨床試験のデータ等に基づくもの。日本では、グラム陽性球菌による複雑性皮膚・軟部組織感染症又は菌血症の1~17歳の日本人小児患者を対象に多施設共同P2試験(029試験)が行われ、MITT(Modified Intention to Treat)のうち組み入れ時にMRSA感染が確認された集団(MITT-MRSA)患者における治癒判定時の臨床効果は、複雑性皮膚・軟部組織感染症では7例中6例が有効と判定され、同様に菌血症では、1例中1例が有効と判定された。
報告された副作用は、複雑性皮膚・軟部組織感染症及び菌血症において、18例中2例に認められ、複雑性皮膚・軟部組織感染症では、14例中1例に血小板数増加、菌血症では、4例中1例に注入部位腫脹が認めらた。同試験において、死亡、重篤な有害事象及び投与中止に至った有害事象は認められなかった。
2022年2月現在、「キュビシン」は小児に対して、グラム陽性球菌による複雑性皮膚・軟部組織感染症又はStaphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌)による血流感染による菌血症に対する治療薬として米国及びEUを含む50以上の国又は地域で使用されている。