アストラゼネカは17日、Evusheld(チキサゲビマブとシルガビマブの併用療法、AZD7442)について、P3相 TACKLE 試験において新型コロナ感染症の重症化または原因を問わない全死亡リスクをプラセボと比較して臨床的および統計学的に有意に低下させたと発表した。
この試験結果により、疾患経過の早期でのEvusheld の投与が転帰の向上につながることが示された。これらのデータは、 The Lancet Respiratory Medicine で発表された。
TACKLE 試験は、症状発現から7日以内の軽症から中等症の症候性 COVID-19 の外来成人患者を対象として実施された。同試験では、被験者の 90%が併存疾患または年齢のために、新型コロナ感染症の重症化リスクが高い集団であった。
TACKLE 試験では、症状発現から 7 日以内の軽症から中等症の COVID-19 の外来患者において、Evusheld 600 mg の単回筋肉内(IM)投与により、本試験の主要評価項目である29日目までの新型コロナ感染症の重症化または全死亡(原因を問わない)の相対リスクがプラセボと比較して 50%有意に低減した(95%信頼区間[CI]15, 71; p=0.010)。
事前に規定された症状発現から3日以内にEvusheldによる治療を受けた被験者の分析では、プラセボと比較して新型コロナ感染症の重症化または全死亡(原因を問わない)のリスクが88%低減(95% CI 9, 98)した。
症状発現から5日以内に Evusheld の投与を受けた被験者では、重症化または全死亡(原因を問わない)のリスクが 67%低減(95% CI 31, 84)した。
また、Evusheld によって副次評価項目である呼吸不全のリスクが 72%低減(95% CI 0.3,92; 名目上の p=0.036)した。人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)などの措置を必要とした被験者は、Evusheld 群では3例(0.7%)であったのに対し、プラセボ群では 11例(3%)であった。
同験におけるEvusheldの忍容性は、概ね良好でした。有害事象の発現率はプラセボ群とEvusheld群でそれぞれ36%と29%であった。
最も多くみられた有害事象は COVID-19 肺炎で、プラセボ群で49例(11%)、Evusheld 群で 26 例(6%)認められた。
重篤な有害事象は、プラセボ群で12%、Evusheld群で7%認められた1。新型コロナ感染症が原因とされる死亡は、プラセボ群で6 例、Evusheld 群で3 例であった。
なお、Evusheld(AZD7442)は、本邦未承認である。
◆英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの集中治療医学教授で TACKLE試験統括治験医師のHugh Montgomery教授のコメント ワクチンの成功にもかかわらず、高齢者や併存疾患を有する患者さん、免疫不全の患者さんなど、多くの人々が依然として重症新型コロナ感染症からの転帰が不良となるリスクにさらされている。
特に、新たな変異株が次々と出現する中で、重症化を抑制し、医療体制への負担を軽減するには、さらなる選択肢が必要である。
TACKLE 試験の結果は、Evusheld の単回筋肉内投与がこのような人々の新型コロナ感染症重症化を防ぐこと、また早期治療がさらに良い結果をもたらすことを示している。
◆Mene Pangalosアストラゼネカバイオファーマ研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントのコメント
The Lancet Respiratory Medicine で発表されたこれらの結果は、新型コロナ感染症に対する追加の防御を最も必要とする患者さんに対してEvusheldを使用することの根拠をさらに補強するものである。
我々は TACKLE 試験データについて規制当局と協議しており、あらゆる面で新型コロナ感染症との闘いが支援できるよう、治療と発症抑制(予防)の適応での申請を進めていく。