MSDは11日、新型コロナウイルス感染症の経口抗ウイルス薬として開発中の「ラゲブリオ」について、プラセボと比較して感染性新型コロナ感染症ウイルス(SARS-CoV-2)をより速やかに消失させたことを示す臨床試験データを取得したと発表した。 同データは、本年開催するEuropean Congress of Clinical Microbiology & Infectious Diseases(ECCMID、欧州臨床微生物感染症疾患学会)で公表される。
発表には、第3相MOVe-OUT試験の一環として、ラゲブリオの5日間の投与期間中およびその後のウイルス学的結果を評価した最終解析が含まれている。
この試験では、重症化のリスクの高い、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症の入院していない成人患者を対象としてラゲブリオとプラセボを評価した。また、検体を採取できた被験者のウイルス感染力をVero細胞を用いたプラークアッセイで評価した。
事前に設定された探索的ウイルス学的評価項目は、modified ITT(intent-to-treat)解析対象集団(1回以上治験薬を投与し、初回投与前に入院していなかった患者)において、SARS-CoV-2 RNA量のベースラインからの変化、ウイルスが消失した(SARS-CoV-2 RNA不検出)被験者の割合、29日目までに感染性SARS-CoV-2が不検出となった患者の割合などであった。
ベースライン時に感染性ウイルスを分離し、ベースライン後の感染力のデータを得られた被験者において、ラゲブリオはプラセボより感染性ウイルスの消失が速やかであった。
ベースライン時に感染性ウイルスを有していた患者のうち、投与3日目において感染性SARS-CoV-2が検出された患者はラゲブリオを投与した患者の0.0%(n=0/92)、プラセボを投与した患者の21.8%(n=20/96)であった。
投与5日目において感染性ウイルスが検出された患者はラゲブリオ群の0.0%(n=0/91)、プラセボ群の2.2%(n=2/89)で、10日目では、いずれの投与群でもベースライン時に感染性ウイルスを有していた患者において感染性ウイルスは検出されなかった。
また、ラゲブリオ®は3日目から10日目におけるベースライン時からのSARS-CoV-2 RNA量の減少値がプラセボより大きくなった。29日目までではウイルスRNA消失率はラゲブリオ®とプラセボで類似していた。
◆Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A.の研究開発本部の感染症・ワクチン部門アソシエイト・バイス・プレジデントのジェイ・グロブラー博士のコメント
開発中の経口抗ウイルス薬ラゲブリオは、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症患者を対象とする当社の第3相試験の探索的解析において、ベースライン時に感染性ウイルスを有していた患者から感染性SARS-CoV-2をプラセボより速やかに消失させ、3日目、5日目、10日目において感染性ウイルスは全く検出されなかった。
このデータから、ラゲブリオが新型コロナウイルス感染症流行の解決の一助となるという期待をさらに強くしている。
◆Ridgeback Biotherapeutics最高経営責任者のウェンディ・ホルマン氏のコメント
このたびのデータは当社が治験依頼者となって実施した第2相試験の結果と一貫しており、うれしく思う。この追加データにより、ラゲブリオが軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症の適切な患者さんに対する治療の選択肢となるという科学的な理解の基礎が強化される。
引き続きラゲブリオの試験を進め、世界中のハイリスクの患者さんに貢献することを目指してさらに理解を深めていきたいと考えている。