高分子コンドロイチンの細胞保護効果の高さを発見 ロート製薬

コンドロイチンのアイケア領域における新たな可能性に期待

 ロート製薬は8日、同社研究拠点ロートリサーチビレッジ京都で進めているコンドロイチンに関する研究について、従来のものと比較して高分子コンドロイチンが角膜上皮細胞に対する保護効果が高いことを明らかにしたと発表した。
 同社は、Connect for Well-being の実現に向けて、お客様のニーズに応えるための点眼薬の研究をすすめている。今回の研究成果もその一環として公表したもので、コンドロイチンのアイケア領域における新たな可能性を示しており、目の症状に応じてより適切なコンドロイチンを配合した点眼薬開発が期待される。
 同研究内容は、2月10 日~12日まで金沢市で開かれた角膜カンファランス2022で発表された。
 コンドロイチンは、製造法や原料により種々の分子量や構造が異なることが知られている。一方でこれらの違いが目に与える影響についてはほとんど明らかになっていない。
 黒目の表面は角膜上皮で覆われており、外界から目を守るバリア機能や、涙を安定化させるムチンが重要である。これらの機能の低下はドライアイの病態に関連しているとされている。
 今回の研究では、分子量の異なるコンドロイチンに着目し、まずドライアイモデルに対する効果を検証した。さらに、角膜上皮細胞株に対する薬理作用を評価し、その作用機序を検討した。
 その結果、高分子コンドロイチンは従来型よりも角膜上皮に対する細胞保護効果が高いことを見出した。コンドロイチンは、多くの点眼薬に配合されているが、さらに研究を進めることで、症状や目的に合わせたコンドロイチンを選択して配合するなど、より良い製品開発への応用を目指す。

 実験結果の詳細は、次の通り。

①高分子コンドロイチンは乾燥による角膜のダメージを保護する

図1 角膜上皮障害に対するコンドロイチンの効果


<試験方法>
ドライアイモデルに被験物質を単回点眼し、角膜上皮障害の程度を評価した。(ロート製薬研究所実施)

 ドライアイモデルに対するコンドロイチンの効果を検証した。生理食塩水を点眼した群と比較して、コンドロイチンを点眼した群では角膜上皮障害が抑制され、その効果は高分子コンドロイチンにて特に強い傾向が認められた(図1)。
 この結果より、高分子コンドロイチンの方が乾燥による角膜上皮障害に対する保護効果が高いことが示唆された。

②高分子コンドロイチンは細胞の接着性を高め、角膜のバリア機能を保護・回復する

図 2 角膜上皮バリアに対するコンドロイチンの効果


<試験方法>
ヒト角膜上皮細胞株に炎症を誘発するための TNF と被験物質を添加し、48 時間後に経上皮電気抵抗(TEER)を測定することでバリア機能を評価した。また、48時間後の細胞接着因子(OCLN)発現を免疫染色(赤色)で検出した。細胞核は青色で染色した。(ロート製薬研究所実施)

図 2 角膜上皮バリアに対するコンドロイチンの効果

 角膜上皮バリアに対する効果を2種類の実験で評価した。その結果、炎症(TNF添加)によるバリア機能低下に対し、高分子コンドロイチンは保護・回復することが判った。
 さらに、バリア機能に重要な細胞接着因子(OCLN)を評価した結果、高分子コンドロイチンは炎症による細胞接着因子(OCLN)の低下を防ぐことが判明した(図 2)。
 これらの結果から、高分子コンドロイチンは、細胞接着因子の発現を促進・維持することで、バリア機能を保護・回復することが示唆された。

③高分子コンドロイチンは角膜のムチンを増やす

図 3 角膜上皮細胞のムチン発現に対するコンドロイチンの効果


<試験方法>
ヒト角膜上皮細胞株に TNF と被験物質を添加し、48時間後の膜型ムチン(MUC16)発現を免疫染色(緑色)で検出した。また細胞核は青色で染色した。(ロート製薬研究所実施)

 さらに、涙液の安定性に寄与する膜型ムチン(MUC16)を評価したところ、炎症によって膜型ムチン(MUC16)の発現が低下するのに対して、高分子コンドロイチンはその発現を促進・維持することがわかった(図 3)。

 これらの研究成果により、高分子コンドロイチンは従来型コンドロイチンよりも角膜上皮において優れた細胞保護効果を示すことを見出した。同時に、分子量の異なるコンドロイチンは、バリア機能やムチン産生など、様々な作用を示すことも判った。
 ロート製薬では、今後もコンドロイチンの研究を継続し、アイケア領域での新たな価値を提案できるように努めていく。

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