田辺三菱製薬とADCセラピューティクス社(ADCT社、本社:スイス)は18日、ADCT社が開発・販売中の抗CD19抗体薬物複合体「Loncastuximab tesirine」について、同日、全てのがん腫を対象に、日本で独占的に開発および商業化するライセンス契約を締結したと発表した。
Loncastuximab tesirine は、ファーストインクラスとなる抗CD19抗体薬物複合体である。CD19タンパク質は、一部の種類の非ホジキンリンパ腫(NHL: non-hodgkin lymphoma)に影響を与える免疫細胞であるB細胞の大部分に特異的に発現しており、新たな治療法開発の有望なターゲットとなっている。 Loncastuximab tesirineは、がん細胞の細胞膜上に発現する CD19に結合し、抗がん剤の送達によりこれらのB細胞を殺傷し、正常細胞への影響を抑えると考えられている。Loncastuximab tesirineは、ADCT社により、現在数種類のNHLの治療薬として開発されているがが、米国では2021年4月に迅速承認されており、ZYNLONTAの製品名で販売されている。
田辺三菱製薬では、抗体薬物複合体を用いたがん治療薬について、米国における研究子会社であるTanabe Research Laboratories U.S.A., Inc.(本社:米国サンディエゴ)が研究・開発を行っている。
これに加えて、抗体薬物複合体を用いたがん領域において画期的な新薬の研究・開発で実績のあるADCT社と同化合物について提携できたことは、田辺三菱製薬の新たなチャレンジとなる。
また、田辺三菱製薬は、2030年のめざす姿として策定した「VISION 30」実現にむけた成長戦略骨子の一つである「プレシジョンメディシン」への取り組みとして、有効性と安全性が高い患者層をあらかじめ特定し、最適な患者層へ治療満足度の高い薬剤の創出を推進。日本における同化合物の開発は、分子標的アプローチを含むプレシジョンメディシン実現への一歩として位置づけている。
同ライセンス契約の締結に伴い、田辺三菱製薬は、ADCT社に契約一時金として3000万ドルを支払うとともに、開発の進捗に応じたマイルストンおよび売上高に応じたマイルストンとして、追加で最大2億0500万ドルを支払う。
また、同社は、日本における同化合物の売上高に応じたロイヤリティをADCT社に支払う。さらに、日本における開発費用を負担することで、今後、実施される同化合物に関するすべてのグローバル臨床試験に参画する権利を有する。
なお、ADCT社は引き続き、日本以外の地域において開発・商業化する権利を留保する。