新規医薬品候補化合物合成等への応用に期待
早稲田大学理工学術院の山口潤一郎教授らの研究グループは7日、芳香環にフッ素原子を導入しながら環を開き、変形する「芳香環開環型フッ素化反応」の開発に成功したと発表した。同研究成果は、創薬化学研究における新規医薬品候補化合物の合成などへの応用が期待される。
有機化合物にフッ素原子を導入すれば、化学的・物理学的にも大きく性質の変化が可能なため、その導入法が盛んに研究されている。例えば、有機化合物に数多ある芳香環(芳香族化合物)にフッ素を導入する方法は様々ある。
だが、芳香環の水素や置換基をフッ素に置き換えるものが多く、芳香環自体の形を変えるようなフッ素導入反応はほとんど知られていなかった。もし、芳香環をフッ素導入と同時に変形できれば、より多様な有機フッ素化合物が創出できる。
今回の研究では、窒素を含む芳香環にフッ素化剤を作用させて、フッ素を導入しながら、芳香環の結合(窒素―窒素結合)を切断し、有機フッ素化合物を合成することに成功した。得られる有機フッ素化合物は、元の構造からは全く異なる第三級フッ素化合物であり新形式の反応である。
今回の研究により、医薬品などを含む40種類以上の化合物を様々な第三級フッ素化合物に変換できた。また、芳香族化合物を原料とした、新たな有機フッ素化合物の合成法が提供できる。同研究成果は、複雑化合物の合成終盤での適用も可能であり、創薬化学研究における新規医薬品候補化合物の合成などへの応用が期待できる。
これらの研究成果は、英国王立化学会誌『Chemical Science』のオンライン版に2021年12月21日(現地時間)に掲載された。