武田薬品は24日、LIVTENCITY(maribavir)について、FDAが移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染の12歳以上の患者に対する最初で唯一の治療薬として承認したと発表した。
対象疾患は、移植後の成人患者と小児患者(12歳以上で体重が35㎏以上)における既存の抗サイトメガロウイルス(CMV)療法であるガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビルに対して遺伝子型抵抗性(無しも含む)を示す難治性のCMV感染/感染症。同剤は、米国において、近日中に患者への利用が可能となる。
CMV pUL97を標的とする新規候補物質のLIVTENCITYは、武田薬品が2021年度にFDAより承認を取得した2つ目の新規候補物質で、ウイルスDNA複製、カプシド成熟およびウイルス粒子放出の阻害に作用する。
CMV感染症は一般的には稀な疾患であるが、移植後の患者に最もよくみられる感染症の一つで、推定発現率は固形臓器移植(SOT)後の患者で16~56%、造血幹細胞移植(HSCT)後の患者で30~70%である。
CMVは、移植後に感染または再活性化すると、移植臓器の喪失や移植不全、あるいは深刻な状態を引き起こす可能性がある。免疫機能が低下した患者において、CMVは命にかかわる可能性がある臨床的に困難な合併症を引き起こす。
FDA承認前には、LIVTENCITYは、臨床的に重篤なCMV血症およびCMV感染/感染症リスクの高い患者の治療薬としてFDAからオーファンドラッグ指定を受けていた。
さらに、移植後の既存の抗CMV療法に難治性/抵抗性を有するCMV感染/感染症の治療薬としてブレークスルーセラピー指定も受けていた。武田薬品は、世界中の患者にLIVTENCITY を届けられるよう、世界各国の規制当局と協議を継続していく。
また、進行中のP3試験においてHCTの患者におけるCMVのファーストライン治療としてLIVTENCITYを検討している。
LIVTENCITYは、maribavirまたは治験責任医師が認めた治療法(IAT、既存の抗ウイルス療法)の有効性および安全性を検討する国際共同、多施設、無作為化、非盲検、実薬対照、優越性試験であるTAK-620-303(SOLSTICE)試験において、既存の抗ウイルス療法(ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビルのいずれか1つまたはその併用)に難治性または抵抗性(無しも含む)の352名のHSCTおよびSOTの両移植後の成人CMV感染患者を対象に評価された。
患者をmaribavir 400 mgを1日2回投与(n=235)またはIAT(n=117)(治験責任医師による投与量)のいずれかに2:1で無作為に割り付けし、最長8週間の治療期間の後さらに12週間フォローアップを行った。
この試験の主要評価項目は、CMVのDNA濃度が定量検出限界以下(投与8週時にCOBAS AmpliPrep/COBAS TaqMan CMV testで測定したCMVのDNA濃度137 IU/mL未満)と定義した。
maribavir投与群の全グレード10%以上の確率で最もよくみられた有害事象は、味覚異常、悪心、下痢、嘔吐、および疲労であった。
治験薬の投与中止に至った有害事象の発現率はLIVTENCITY 投与群と比較しIAT群で高く、それぞれ32%(n=37/116)と13%(31/234)であった。
味覚異常(46%, n=108/234)は概ね軽微で、maribavirの投与中止に至った患者はまれであった(1%)。
また、患者の37%は投与継続中に回復した(期間中央値:43日、範囲:7~59日)。投与中止後も味覚異常が持続していた患者においても、89%で回復した。投与中止後に症状が回復した患者における投与中止後の症状持続期間中央値は6日(範囲:2~85日)であった。
全死亡率は各投与群で同程度であった(LIVTENCITY投与群11% n=27/235;IAT群:11% n=13/117)。
◆U.S. ビジネスユニット&グローバル ポートフォリオ コマーシャライゼーションプレジデントのラモナ・セケイラ氏のコメント
移植後の抵抗性の有無に関わらず難治性を示すCMVの患者さん達はとても脆弱で十分な治療が提供されていない。そのような患者さんに対する最初で唯一の治療が承認された今回の発表は、移植後のCMV感染症の管理を再定義するものとなる。
移植を受ける患者さんは、長く複雑な過程を経ていく。この治療の承認により、こうした患者さんにCMV感染/感染症と闘うための新たな経口抗ウイルス薬をお届けできることを大変光栄に思う。
◆Department of Infectious Diseases教授のRoy F. Chemaly M.D.氏のコメント
FDAによるLIVTENCITYの承認は、移植後のCMV治療において大きな前進となるもので、深刻な状態を引き起こす可能性のある日和見感染症の患者さんに新しい治療選択肢をもたらす。
臨床試験の投与8週終了時の主要評価項目の達成により、LIVTENCITYが既存の抗ウイルス療法よりも統計学的に優れていることが示された。